華麗なる腐女子日記番外編

□嵐の夜に
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雨が強く窓に叩き作られている。
風が吹き荒れて、嵐だと改めてわかった。

「いやー、嵐だねぇ」

「そうだな。帰れ」

「え、この嵐の中?」

暴風警報が出たため、学校は休みだ。
だが、高尾はその中わざわざ緑間の家に遊びに来ていた。
高尾が来たときはまだ雨が降っていなかったとはいえ、わざわざ来るとはバカとしか言えないと緑間は思った。

「だって家にいても暇なんだもん」

「もん、とか言うな。似合わないのだよ」

「あ、ひでー」

にべも無く言う緑間に高尾は笑いながら返した。

「でもさー」

高尾に視線を向けず、本を読んでいた緑間は顔を上げ、高尾を見た。

「いつも一日一緒にいんのに今日だけ一緒にいないって、寂しくない?」

「……一日一緒、というわけではないだろう。朝と夜は家にいるからな」

「いや、そうじゃなくて…」

「ふん」

「あ、もしかして……」

鼻を鳴らし、また視線を本に向けた緑間を見て高尾はニヤリと笑った。
緑間の顔が赤いのだ。

「照れてる?」

「照れていないのだよ!!」

「かっわいー!!」

「うるさい!!」

顔を真っ赤にしながら緑間は怒鳴っ



ビリビリッ!!

「ああー!!」

容赦なく書いていた原稿を破られ、私は悲鳴を上げた。

真ちゃんは私を冷たく見下ろしていた。
まるで汚物を見るかのような視線に、ちょっと興奮する。

「あれだね、悠ちゃんは懲りないね」

「冬コミに向けての作品がー!!」

「死ねばいいのに」

真ちゃんは私の心からの悲鳴を聞いて、そう吐き捨てた。
私は破り捨てられた原稿を拾い集め、必死に繋ぎ止めた。

「何て悲しい姿なんだろう……」

和ちゃんはそんな私を見て、涙を拭うフリをした。
そして真ちゃんはと言えば、私の眼前に足を置きふんぞりかえって言った。

「靴を舐めろ」

「仰せのままに」

「待って!人としての尊厳を失っちゃダメだ、悠ちゃん。てか真ちゃんも何言ってんの!?」

「冗談なのだよ」

「え。私本気だったよ?」

「「………」」

真ちゃんと和ちゃんは同時に何か悲しいものを見たかのように、私を見つめ、ため息をついた。
そして真ちゃんは私から原稿を奪うと和ちゃんに渡した。
和ちゃんは黙ってライターで原稿を燃やす。
何でライターを持っているんだ、とかそんな事はどうでもよかった。

「原稿ぉぉお!!」

ああ、灰になっていく。
私の血と汗と妄想の結晶が燃えていく。

「何がいけなかったの!?やっぱ、もっと甘めがよかったの!?イチャイチャしたかったの!?それとも高緑じゃなくて緑高がよかったの!?」

疑問をそのまま問えば和ちゃんは小さく燃えた原稿を私に投げつけてきた。

「か、髪が!!」

軽く髪が燃えてしまった。
そんな私を二人は無視して、各々自由に過ごしていたけれど。

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