大江戸恋絵巻
□大江戸恋絵巻
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「……い…起きろ…」
『ん…龍太…あと5分だ…け…』
まだ覚醒してない頭でぼんやりと口を動かす
「何を寝ぼけた事を言っている。早く起きろ」
はっきりと聞こえた低い声に重い瞼を開ければ
メガネと鋭い眼差しが視界に映った
『っ!…か、春日局…さま』
勢いよく起き上がる
「ようやく目覚めたか」
呆れ気味の声を聞きながら
辺りを見渡す
やっぱり
夢じゃなかったんだ…
広い和室もこの人達も
目が覚めたら全部戻ってるなんて――
「聞いているのか?」
『えっ…ハイっ』
我に返って前を見据えれば
春日局様はメガネを押し上げる
「貴方には上様…家光様の影武者になって頂く」
『………え!?』
驚き目を見開いた
『む、無理ですよそんなッ…私が影武者なんて…絶対に無理ですっ』
声を張り主張すると
「ならば、貴方を罪人として捕らえるまでだ」
『っ!?』
返って来た言葉に息を飲んだ
春日局様は顔色を変えず続ける
「素性の分からぬ者が上様の部屋に侵入したのだからな。その罪は重い」
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