大江戸恋絵巻
□大江戸恋絵巻
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何処までも続く長い廊下
誰も居ないと思って声に出して気合いを入れた矢先
後ろからかけられた声
慌てて振り返った先に見えたのは
栗色の髪と
穏やかな表情
最初に家光様に会った時
春日局様と一緒にいた――
『永光…さま?』
首を傾げて問うと
ふっと微笑む
「様なんて、私はそのように呼んでもらうほど偉くありませんよ」
『え、えっと…じゃあ、永光さん…でいいですか?』
改めて言い直すと
返事の代わりに笑みを深くした
『永光さんって…何をしている方なんですか?』
「私ですか?私はここの全体を纏める…簡単に言うと、大奥総取締役です」
『……大奥総取締っ?』
思わず声のボリュームを上げた
名前からして物凄く偉い人な気がするんだけど…
本当に様つけなくていいのかな…
まじまじと見つめていると
「大奥の者は私をお万の君と呼んでいるので、上様もそのように呼んで下さい」
『っ…はい』
緩んでた気を引き締めるように背筋を伸ばす
すると永光さんは柔らかく微笑んで
一歩近付いた
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