大江戸恋絵巻
□大江戸恋絵巻
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「では頼んだぞ稲葉。着替えが済んだ頃また来る」
それだけ告げると
春日局様は部屋を出て行った
『……ハァ…』
緊張感から解放され大きな溜め息を溢す
「事情は春日局様から聞いております。私に出来る事があったら何でも仰って下さい」
『稲葉さん…』
「さん付けはおやめ下さい。私は貴方に仕える身なのですから」
『でも…』
歳上の男の人にタメ口なんて
それもいま会ったばかりの人に…
「上様が世話役に敬語なんて、おかしいでしょう?」
そう言われて数秒考える
『そうだよね…分かった。』
納得して頷けば
豪華な着物を並べ出した
どれも色鮮やかで目を奪われてしまう
「これを着付けるのでお召し物を脱いで下さい」
『……えっ!?』
耳を疑う発言に着物から稲葉に視線を変えると
稲葉は平然としている
あ、平然としなきゃいけないのは私の方か…
平然と脱いで
平然と着せてもらえばいいんだよね
………
…………
って、出来る訳ないじゃん!!
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