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□お酒はほどほどに
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それは、食事の際に二人で酒を飲んだ時だった。
乾杯してもあいつはほんの一口、二口しか飲まない。
対して、俺は酒に弱い訳では無いので結構な量を飲んでいく。
ただ、今日はちょっと強引に勧め過ぎたかもしれない。
気が付けばあいつは俺と同じくらいの量を飲んでいた。


食後に俺はソファにぐでんと腰掛け、ぼーっとテレビを見ていた。
すると。
「零崎ー」
「なにいーた、んおわっ!?」
いきなりいーたんが俺のところまで来て俺を押し倒した。
幸いソファの上だったから衝撃もうまく殺されて、痛くもなんともなかったが。
いーたんはクスクスと無邪気に笑って俺を見つめる。
おお、かなりレア顔。
「どうしたいんだお前は」
「んー、どうしよーね?」
甘ったるさを含んだ声で返された。
相当酔ってんなー。
マジでどうするつもりだこの後。
「………んー?」
いーたんは視線をぐるぐると宙にさまよわせる。
本気で何も考えてないらしい。なんだ、びっくりした。
「いーたん何も考えてねーの?」
「うーん」
やけに間延びした声とチラッと俺を伺う瞳。
「何々?いーたんってば、やらしいことでもしたくなっちゃった?」
「シたいのは零でしょ」
「…ぐっ」反論出来ない!
俺が唸っていると、ふ、と口に重なるモノが。
一瞬だけ遅れる思考。
いーたんは、にや、とまるでいたずらっ子のように笑うと俺の頬に、耳に、首筋にと執拗にキスを繰り返した。
「い、いーたん?」
恐る恐る聞く俺に対して、いーたんはまたクスクスと笑いながら「今日は僕が上でもいいよね?」って、ええぇぇえ!!?
固まる俺をスルーして、ヤツは俺の服に手を掛ける。

こいつに無理に勧めるのはもうやめよう。

伸びてくる手を払いながら、俺はそう呟いた。

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