Buche de Noel(main)

□In the future
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額に一層冷たい感触が伝い、俯いていた顔を上げた。
空に光はなく、黒く立ち込めた雨雲に覆いつくされている。
まばらに降っていた雨足も強まってきたようで、激しく地面に叩きつけはじめた。
既に濡れていた全身で受けつつもスピードを変えず、家路へと進む。

「…寒ぃ」

けれど急ぐ気にはならなかった。
むしろ何もかも洗い流してくれそうなこの雨を、浴びていたいと願う自身がいる。
ひたりと立ち止まれば震える全身。
指先にもう感覚はない。

「何だかなあ」
「それはこっちのセリフだよ」
「…シルバー、か」

声の主は蛍光灯に照らされ、佇んでいた。片手にはチェック柄の傘が握られている。

「珍しいな、水嫌いのアンタが全身びしょ濡れになってるなんて。風邪ひくぞ」
「Don't worry!生憎丈夫な所が取り柄なもんでね」
「…ふーん。ま、聞くつもりはないけどさ」

何が、とは言わない。
シルバーはこちらへ近寄ると腕を引っ張ってきた。
傾いた体が傘の下へ入り込む。

「… Thanks」
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