ライオンとネコ

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こんにちは、紅です。

先日街を迷子になってライアンに心配をかけて数日は家に引きこもっていましたが、三日目にしてでてきました。

ひきこもり万歳、じゃなく

しかしどうにもこの格好が気に入りません

いつもの服のコートは前を完全に閉めて、帽子にサングラス

もうこっちが不審者になった気分です。もしくは有名人

この格好なら外出に渋っていたライアンも頷いてくれて、今日は持ち物チェックまでされました

子供かっ!!

いえいえ心配かけたから仕方ありません

もう心配をかけないためにも大通りしか歩かないと決めました、怖いし

さてさっそく出発です!




















「ふぅ…」

大通りのお店を歩き回り、お昼になる前にカフェの席を確保した

お金はライアンからもらっているが、無駄遣いはしたくないのであまり買い物はしたくない

ついでにバイトも探し中である

しかし戸籍もないコウがバイトするには書類不足でどこも雇ってくれそうにない

溜息をつき、ペーパーナプキンで無心に鶴を折る

「お客様、店内が混み合っておりますので相席とさせていただいてもよろしいでしょうか」

「あ、はい」

相席、ということはこの目の前の席に誰か来るのか

勘弁してほしい

しかし断れないのが日本人の運命なのか…

小さく溜息をもらし、できあがった鶴をコーヒーカップの横に座らせる

「っ…!!!」

すると、息をのむような声にならない声が聞こえ、ふと顔を上げた

「!!」

綺麗な菫色の瞳と目があった

「あ……し、失礼します」

「ど、どうぞ…」

何故かお互いにどもりつつ、青年が目の前の席に腰を下ろした

メニューを開き何かを頼んだようだが、どこかそわそわしてこちらまで落ち着かない

というか、私はこの世界に来ることで何かフラグを立ててしまったのだろうか?

なんで連日のように素顔のヒーローと出会える!?天国か!!

荒ぶる心を落ち着かせるようにコーヒーカップを持ち上げると、カップにもたれかかっていた鶴がこてんと倒れる

「あ…あのっ…!」

「!!は、はい…」

少し裏返った声に驚いて顔を上げると、顔を真っ赤に染めた金髪青年がもじもじしながら口をぱくぱくさせていた

「それ…オリガミ、ですよね?」

「あ…はい、ペーパーナプキンじゃうまく折れなかったんですけど…」

「すごいです…!あ、す、すみません…急に喋っちゃって…」

テンションはMAXなのにがんばって自制しているのが目に見えた

聞きたくて、触りたくてしかたないんだろう

そんな青年にくすりと笑いかけ、少し頼りない鶴を差し出した

「こんなのでよければ、どうぞ」

「え!いいんですか!?」

「はい。私はいつでも作れますから」

青年は割れ物を扱うように鶴を受け取り、目を輝かせていろんな角度から鶴を見る

「うわぁ…すごい…!これ、一枚でできてるんですよね…!」

すごい、すごいとはしゃぐ青年がかわいくて、コウは嬉しそうに笑みを深めた

「私、天宮紅って言います。よかったらお友達になりませんか?」

「え…?」

びっくりしたように目を見開いて固まる青年に、しまった、と口をおさえて肩をすくめた

「すみません…いきなりで失礼でしたよね」

「そ…そんなことありません!僕なんかでよかったら…是非…!」

「本当ですか?よかった…私、まだこの街に来て間もなくて…知り合いが少なかったんです」

「そうだったんですか!」

青年は運ばれてきたコーヒーカップの横に鶴をそっと置くと、はにかむように笑みを浮かべてくれた

「イワン・カレリンです…その、よろしくお願いします…」

「イワンさん、ですね」

知ってましたけど、なんて心の中で囁きながら、差し出された手を握りしめた

「よろしくお願いします」










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