ライオンとネコ

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私の退院は、早かった

傷口が思いのほか早く塞がり始め、日常生活に支障がないほど動けるようになったのは入院して1週間の時のこと

医師のOKが出て、ライアンに付き添われて、やっと家に帰ってこれたのだ

「ただいまシルバー!」

「帰って早々シルバーかよ…」

ジャングルの中でこちらを見るシルバーの頭を撫で、久々のソファーに倒れこんだ

「おーい、コウちゃーん」

「んふふっ」

呆れたように自分を呼ぶライアンを無視しつつ、ソファーに顔を摺り寄せる

あぁ、やっぱりライアンの香り

はぁ、と落ち着いていると、ぐるりと視界が回転した

「無視すんなってーの」

「っ!?」

突然体が回転したことに頭が追い付かず、目をぱしぱしと開閉させる

「なぁ?」

目の前には、とても楽しそうなライアン

「え、えぇと…ごめんなさい?」

やっと視界がはっきりし、ライアンが自分にまたがっているんだと理解する

十分に広く大きいソファだが、二人して寝転がれるような広さはない

ライアンの腕が顔の横にあり、足と足が触れている

入院していたときに真面目な話をしてから、なんとなくまともにライアンを見ることができなかったが

久々にライアンと目が合った

「やっとこっち見たか」

「ら、ライアン…近い、よ?」

「そうだな」

「あの、えと、その…」

きょろきょろと目を泳がせていると、ライアンの肘が曲がってさらに顔が近づく

「コウ、俺を見ろ」

「っ……」

一度ぎゅっと目を瞑り、そろりと瞼を持ち上げる

今度こそばっちりライアンと目が合った

「おかえり」

「あ……」

ライアンは嬉しそうに、愛おしそうに笑みを浮かべ、コウの頭を撫でたのだ

じんわりと涙腺が緩み、それを隠すようにライアンの首に腕を回した

「!!」

「たっ……ただいま、ライアン…!」

少しだけ離れていた体が、今度こそ密着した

あぁ、ライアンの香りだ

ソファーよりも、こっちの方が落ち着くし安心する

私の、居場所

目を閉じてライアンの頬に自らの頬を摺り寄せる

ライアンもコウの頭をぽんぽんと撫でてくれて、頬が緩みっぱなしだ

「………」

ライアンの手が止まり、コウは内心首を傾げる

そして、今更ながらその近さと恥ずかしさに顔が赤くなっていった

「あ、あのっ…ライアン…」

「ん?」

「そろそろ、起きない、かな?」

「……もうちょい」

ぐっとライアンの腕に力が入り、体が硬直した

「…消毒液の匂いがする」

「んっ…」

首にライアンがすり寄ってきて、身を捩るが体が離れることはない

むしろさっきよりもホールドされている

「ら、ライアン…?」

「んー…」

そっと頬に手を添えられ、反対側の耳にキスされた

飛び出しそうになった声をなんとか飲み込み、どうしよう、とライアンの手の方を向く

するとライアンはコウの項にかみついた

「ひっ…」

「ん…」

甘噛みされ、そこをなぞるように生暖かいものが這う

「は、ぅ…ライアン…!」

ぷるぷると震えながらライアンの肩に手を置き、押し返そうとするができるはずもなかった

ライアンはそのまま項から肩にキスを落としていき、手はそっと腰を撫でる

「んん…!」

涙目で声を我慢するコウを見て、やっとぴたりと動きを止めた

「……なぁ、コウ」

「な、に…」

はぁ、と息を整えながらライアンを見ると、真剣な瞳が見えた

「やっぱ、俺にはアンタが必要だ」

頬を撫でられ、ライアンの顔が近づく

その瞳に吸い込まれそうで、視線もそらせないまま

静かに、唇が重なった










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