短編
□00.5
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マーク・シュナイダーの事件から数ヶ月
トリオとして一部で活動し始めてからやっと慣れてきた頃
ライアンはいつものようにトレーニングをしてから事件もないので帰宅しようとしていた
「おーいライアン!今日、どうだ?」
新たに加わった(といってもバーナビーの初代パートナーなのだが)トリオの一人、鏑木虎徹がジェスチャーで酒を煽る仕草をしながら微笑む
隣にはバーナビーもおり、どうやらトリオで飲みにいかないか、ということらしい
「あー、今日はやめとくー」
「えー、んだよ付き合い悪いなー」
「虎徹さん、無理矢理誘うのはよくないでしょう」
「けどよー…」
「いーからいーから、次誘ってくれたら行くっつーの。今日はなんとなく気分じゃねーんだよ」
着替え終わり鞄を持つと、二人にひらりと手を振る
「じゃあ今度いい店探しといてやるよ!」
「おう、楽しみにしてるぜオッサン」
「気をつけて」
「んじゃーお疲れさーん」
他のヒーロー達にも軽く挨拶しながらトレーニングルームを出ると、たまにファンに囲まれながらも我が家を目指す
車で来ることもあるが、今日は何故か歩く気分だったので行きも帰りも主に徒歩だ
夕飯を何にしよう、と考えながら歩いていると、ゴールドステージにあがるゴンドラの近くで何かが視界の端に映った
いつもなら絶対に気にもかけない、路地への入口
そこになにかが落ちている
いや、何かがいるのだ
「?」
それがどうしても気になり、ずかずかと近づいてしゃがみ込む
「…………ネコ?」
黒い塊、かと思いきや、真っ黒なネコだった
艶やかな毛並みの黒猫は、野良とは思えないほど綺麗だった
「へぇ…」
しかし寒いのか、ぷるぷると震えながら体を丸めている
ふむ、と顎に手をあて、そっとその体を撫でてみた
それはほのかに温かく、ライアンの手のぬくもりを感じたのか僅かにすり寄ってくる
「…………」
すりすりと体を撫で、よし、と囁くとその黒く小さな体を抱き上げた
「俺様の家に招待してやるよ、子猫ちゃん」
そっと抱き締め、持っていたタオルで体を包み込む
捨て猫か?野良にしては綺麗な毛並みだしなー…
よしよし、と撫でながら立ち上がり、再び歩きはじめる
帰りにミルクも買って帰ろう
そんなことを考えながら―――――
『それがまさかなー』
『へ?ライアン何か言ったー?』
*