リクエスト
□側にいさせて・・・
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「側にいさせて・・・」
※リジー視点。
「もうイヤッ!!」
私は側に山積みされてある書類をシエルに投げつけた。
「・・・・っ、イヤならもう来るな、僕はお前に構ってるほど暇ではないんだ」
「なによ、いいもん!もう来ないわ!」
途中で聞こえたセバスチャンの声も無視して、私は玄関のドアを勢いよく閉めた。
バターン!!
レディ失格だとどこからか声が聞こえた。でも今の私にはそんなこと関係ない。
なによ・・・シエルのバカッ!少しも私のことなんて見てくれない。仕事仕事・・・仕事ばっかり・・・。これで婚約しているといえるのかしら・・・?
「・・・・・っ」
私は涙で濡れた瞳をグィッと拭い、馬車に乗り込んだ。
このまま、家に帰りたくない・・・。そんな時、一人の人物の顔が頭に思い浮かんだ。
チャールズ・・・
急に彼に会いたくなって―
私は知らず知らずのうちに、御者に“チャールズ・グレイ伯爵の屋敷まで・・・”と告げていた。
* * *
「お嬢様、到着しましたよ」
「ありがと・・・」
私は馬車をそろそろと降りて、チャールズの屋敷の玄関の方へと歩いていく。
まだお仕事かもしれないのに―
急に思い立って来てしまったけれど・・・
でも、どうしても会いたくなったから―
―躊躇いがちに呼び鈴を鳴らすと、すぐに使用人が扉を開けてくれた。
「あの・・・こんにちは。私・・・エリザベス・ミッドフォードと申します。グレイ伯爵は―」
「ああ、ミッドフォード侯爵のご令嬢様でいらっしゃいますか。さぁ、どうぞ。伯爵は今日お休みでお部屋の方にいらっしゃいますよ」
その言葉に心に光が射し込んだような気がした。今日はお仕事だとばかり思っていたから・・・。