Treasure

□闇のナカに白(小説)
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闇のナカに白












控えめな話し声、ワイングラスの響く音 食器の擦れる音だけが響く夜会。上流階級だけが集まるそれは、優雅で誰もが羨む世界だが実際、綺麗な笑顔の裏では腹の探り合いがされているのだ。
いつなにが起きるか分からないそんな中、キラキラと輝く金の髪を後頭部に一つで纏めたエリザベスは従兄弟であるファントムハイヴ伯爵を見つけると、抱きしめはしないもののその腕に自身の腕を絡めた。14歳の頃のエリザベスは周りの目も気にせずハグやら何やらとしていたのに、随分成長した物だーーと、ファントムハイヴ伯爵の有能執事は内心ぼやいた。







ーーー






「ホンット最悪」

「許してやれ」

「大体大事な夜会の時に何であんな素人を使うワケ?」






夜会に遅れてやってきた白い髪の整った容姿を持った男は、どうやら途中で御者の失態により馬車が故障してしまった様だった。妙に"大事"を強調した彼に、御者はビクつく。
大きくため息を吐く彼の腰には、レイピアは無い。しかも、身につけているそれは白であっても燕尾服では無かった。




「それではグレイ伯爵、行ってらっしゃいませ」

「グレイ伯爵、じゃあまた」




どうやら、彼は今日伯爵として夜会に出向く様だ。プライベートと仕事を分ける相方のそれに手をひらひらと振って観音開きを潜れば、姿はあっという間に消えて行った。








今日は愛おしい彼女も、この夜会に参加しているのだ。









ーーー






何てイライラの中に少しの楽しみを混ぜて夜会に参加したのが数分前。

全然楽しくない。何故リジーはあのクソガキと一緒にいるのだ。

グレイは先程から媚をうってくる貴族たちに愛想笑いを浮かべながらも、内心怒りでどうにかなってしまいそうだった。同じ空間に愛おしい彼女がいるのにも関わらず、触れて、話す事ができない。レイピアが無くて良かったと、陛下の顔に泥を塗る所だったと、ため息を小さく吐いた。その時。






「グレイ伯爵」

「…レディエリザベス」





後ろから、聞き慣れた声。

エリザベスが登場したと共に、サッと消えてく淑女達に肩の力を緩めながら 後ろを振り返る。

「場所変えようか」

八つ当たりでも何でも無い。少しお仕置きをするだけ。
キョトンとするエリザベスに、グレイは満面の笑みを浮かべた。






ーーーーーーー






「チャールズ!どうしたの、」

「どうしたもこうも無いよ。
ボクに挨拶もしないで幼馴染と楽しくおしゃべり?」

「シエルは従兄弟よ?」

「従兄弟の前に男だから」





上質なベッドに乱暴に押し倒す。天蓋から吊るされたカーテンがゆらゆらと揺れて、二人の姿を隠した。暗闇と言うものはどうしても不安がつのる物で、エリザベスは柳眉を寄せて小さく怖いと 無意識に呟いた。だがそれはグレイの中の獣を目覚めさせるだけで
頬に添えられた手にピクリと過剰に反応してしまった。






「ぁ、チャールズ…?」

「…リジーはボクの欲を狩り出すの好きだよね」

「んっ…」






借りている部屋だろうが関係無い。どうせ明日には帰るのだからと、この部屋に入る時に誰も近づけさせるなとこの邸の執事に言ったのを頭の隅で確認し、静かにドレスのボタンへと手をかけた。夜は長い。







ーーーーーーー







ぐちゅり と水音と艶かしい女性の声だけが響く室内。
舌を吸われ、はむはむと上唇を挟む様に口付けられては 口端から垂れるどちらの物かわからない唾液を、すかさずグレイが舌で舐めとる。その間にも中指と薬指でぐにぐにと膣の中を我が物の様に弄るのだから、ちゃっかりしている。鎖骨と首筋で存在を主張している赤いそれは、数えるには片手では不可能だ。耳の直ぐ下に狙いを定めて、可愛らしい音をたてて印を作れば もう露出の高い服など当分着れないだろう。ほくそ笑むグレイを知らない少女は、頬を染めて小さく声をあげた。






「ひ、ぁう…ああッ!」

「ここ、好きだよね」






爪でそこを引っ掻けば、背中をしならせてあっけなく果てた。ドロリと出てきた愛液を指で掬いあげ、赤い舌がそれをチロリと舐め取る。肩を揺らして息を吐いては吸い、吐いては吸いを繰り返す少女は、グレイのその行動に抗議をするほどの気力を持ち合わせていなかった。せめてもの抵抗と、睨みあげればいやらしく口端を釣り上げてくる物だからたまったもんじゃない。頭の中で警報がする。逃げなければ、と。
幾分か楽になった身体を一生懸命に動かして、羽毛布団を引き寄せる。もうナニをする気力が無いのだから辞めようと、行動で彼に訴えようとしたのだ。が、






「まさかこれくらいで音を上げる訳?」

「きゃ、あ!」






あっという間に布団を剥がされ、横向きだった身体は仰向けに戻されてしまった。語尾にクエスチョンマークがついているのに、どこか有無を言わせないそれについにエリザベスは折れた。







「…もう好きにして」

「言われなくても」






夜は長いのだから。

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