Treasure

□旅行(小説)
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□旅行
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「じゃあ行ってくるわねポーラ!」

夜21:00
甲高い声がはじけた

ポーラと呼ばれたメイド服を纏った女性は主――
エリザベス・エセリ・コーディリア・ミットフォード、通称リジーに心配そうに口を開いた

「お気をつけ下さいね、お嬢様」

その言葉にリジーは腰に手を当て頬を膨らませ気味に言う

「んもぅ、ポーラったらいつまで子供扱いしないでよ、私もう17なのよ?」

「も、申し訳ありませんっ ですがお嬢様に何かあったら…」

「大丈夫よ、だって…―」

「リジー、もう行くよ?」

少し離れたところからチャールズ・グレイが此方へ向かって来た
リジーは、ぱあっと目を輝かせ、グレイの元へ走り腕を組んでみせた

「チャールズと一緒なんだもの!」

グレイは自分の腕に抱きついてきたリジーを微笑んで見る

ポーラはその様子を見て改めて頭を下げた

「グレイ様、お嬢様をよろしくお願い致します」

「うん、ボクに任せてよ」




二人は飛行機に乗る為に空港に向かうタクシーへ乗り込んだ

バタンッ

扉が閉まると程無くして車が走り出した

「ねぇ、チャールズ どうしてタクシーなの?」

後部座席で身体を揺らしながら聞くリジーにグレイは答える

「折角二人きりの旅行なんだから使用人なんて居ない方が良いでしょ?」

「空港に行くまででも?」

「空港に行くまででも!」

暗い夜道ですれ違う対向車のライトだけが不規則に二人の顔を照らす

「22:00出航だったわね」

「そうだよ、あと40分」

「オーストラリアなんて久し振り!」

リジーは手を組んで楽しそうに笑う

「ボクもオーストラリアは昔行ったきりだな…」

「ね!着いたら何しましょうか!?」

「ふっ… リジー、まだ空港にも着いてないよ?」

「良いのよ!今から考えておいた方が沢山沢山、良い思い出が出来ると思わない!?」

太陽のような笑顔を向けられるとグレイも形無しだ

「分かったよ、じゃあ…―」






「着きましたよ、お客さん」

タクシーが空港前でキキッと止まると二人は広げていた本を閉じて慌てて鞄にしまい、車内から出た

「お客さん、お代」

と運転手が言うとグレイは一枚のプラチナカードを取り出す

「んじゃこれで」

「…あのお客さん、カードは使えません」

運転手がそう言うとグレイは驚きの声を上げる

「えぇ!?じゃあ何で払うのさ?」

「現金で…」
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