Treasure

□邪魔者小悪魔(小説)
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「おねぇーちゃーーん!!」


街でデートをしていたグレイとリジー

店を出たところで聞き覚えのある声が聞こえてきた

リジーは直ぐにその声の主を思い出して振り返る

グレイもある意味素早く察知してその声がする方を見た

お馴染み迷子の天才、アーサーである

アーサーは一つ向こうの道路から走って来た

手をブンブン振りながら二人に… と言うよりリジーに駆け寄って来る

道路を渡りきる時だった――

ガタガタガタガタッ

馬車が此方へ向かって来た

「おねーちゃーーん!!」

…何も起こらなかった

アーサーはそのままの勢いでリジーに飛びつく

ギュッ

「おねぇちゃんひさしぶり!」

「ひ、久し振りね… アーサー」

リジーの声は割と遠くから聞こえてきた
不思議に思いアーサーが顔を上げると

「久し振り、アーサー」

黒いオーラを纏ったグレイと目が合う

「な、なんでおにぃちゃんがうけとめるのさ!」

アーサーはバッとグレイから離れる
すると酷く機嫌の悪い顔で無理矢理笑顔を作りながら口を開く

「あんな遠くからリジーに向かって走って来るのが見えててそのまま抱きつかせると思ってんの?」

そう、グレイはアーサーがリジーに飛びつく前に身代わりとなったのだ

「へー おにぃちゃんぼくのこと好きなんだー ロリコンってやつだよね
でもぼくはおにぃちゃんのことなんか大嫌――」

「誰がお前のことを好きだって〜!?」

グレイはアーサーの両頬を横に抓る

「いはははは!! バカにぃはなせ〜!!」

「ちょっと、チャールズ…」

リジーがそろそろこの二人の仲裁に入る

グレイがパッと離すとアーサーは…

「おねーちゃーん! シロアリがぼくをいじめる!」

「誰が白蟻だ!!」

結局リジーに抱き付くアーサーにグレイは突っ込む

「よしよし、アーサー 今日はどうしたの?」

本気で泣いている訳ではないのでリジーは軽く背中をポンポンと叩いてあやしてからアーサーに訊ねる

「おねぇちゃんが見えたから!
あとついでに白いのも見えたから」

「『白いの』ってのはボクのことか、えぇ?」

「いたたたたたた…!」

アーサーの頭をグリグリするグレイ

「ちょっとチャールズ、子供相手にそんなムキにならなくても…」

その言葉にアーサーが乗っかる

「そーだそーだ! 子供あいてにおにぃちゃん大人気な〜」

ベェー とやっているアーサーにグレイは完全に我を忘れてリジーの前で言ってはいけないことを叫ぶ

「うるさいっ!! 大体ボクはお前みたいなガキがこの世で一っ番、大っっ嫌いなんだよ!!」

そのグレイの大声に街が静まり返った

「………あ」

グレイは油のさしていないドアのようにリジーの方を見る

リジーは眉を下げて言う

「そっか… やっぱりチャールズは…
子供、嫌いなんだね」

「あ、いや、リジー 違っ…」

弁解しようとした時、先程グレイに怒鳴られたアーサーが泣き声を上げた

「うわぁぁぁぁぁん!! あぁぁぁぁ!!」

「ちょ、」

グレイはアーサーを見る

「ほら、アーサー泣いちゃったじゃない…」

「それはこのクソガキが――」

「うわぁぁん!!」

「あー、もう!」

グレイは髪をグシャグシャっとするとアーサーに視線を合わせる為、しゃがみ込んだ

「悪かったってば、デカい声出し――」

ペッ

「…………」

グレイの顔に唾が吐きかけられた
グレイはそのままの状態で固まる

「ぼくがあれくらいで泣くわけないじゃん、ぶわぁ〜〜〜か!!」

「―――!!! やっぱり殺す!!」

グレイが剣を取り出そうとするとアーサーはリジーの後ろに隠れる

「おねぇちゃん、シロアリがいじめる」

ビキッ ビキッビキッ ←血管が切れてる音

するとリジーはアーサーにしゃがみ込んで言う

「アーサー、この人にはちゃんとチャールズ・グレイって言う名前があるんだから
白蟻なんて呼び方しちゃあ駄目よ? 白蟻なんて」

「何で二回言ったの!?(泣)」

グレイが突っ込むとアーサーは驚く程素直に肯定の返事をする

「うん、分かった!」

「そう」

リジーは微笑むと続けてアーサーは言う

「じゃあこれからはおねぇちゃんのこと、リジーねぇちゃんって呼ぶね!」

「えっ」

「んなっ!!」

「だめ?」

「ふふっ、良い――」

「―い訳ないじゃん!!」

グレイが割り込む

「チャールズ…」

「何でおにぃちゃんが決めるのさ!」

「当ったり前だよ! リジーの名前を呼びたいならまずボクに話を通せ!」

「リジーねぇちゃんのかれしみたいなこと言うなー!
リジーねぇちゃんはぼくのお嫁さんになるんだから!」

「っっ前は本当に日本… じゃなかった、英語が分からないみたいだな!?
単語で言ってやろうか!? クソガキ、リジー、結婚、デキナイ、リジー、ボクのモノ」

「…おにぃちゃん」

「…チャールズ」

「「バカみたい」」

「う、うるさいなぁ! このガキが上流英語が理解出来ないって言うからだよ!!」

自分でもバカだと思ったのか、少々顔を赤くして叫ぶ

しかし二人は、

「リジーねぇちゃん! 遊ぼ〜!」

リジーに抱き付く

「……っ! 離れろ!」

グレイはアーサーの襟首を引っ張る

「いったいなー!」

「リジーに引っ付くな、このエロガキ」

「いーじゃん! リジーねぇちゃんはおにぃちゃんのものじゃないんだから!」

「バッカじゃないの!? リジーはボクのものだから!
髪の毛一本、細胞に至るまで!」

「ちょ、チャールズ… 声大きい…」

街中でそんなことを叫ばれてリジーもだんだん顔を赤く染めていく

「リジーは黙ってて!」

「えぇっ!?」
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