Treasure

□玩具夜の奇妙な店主(小説)
1ページ/3ページ

「ねぇ、チャールズ 最近この近くにお店が出来たんですって!」

「へぇ〜」

この日、リジーとグレイは街をデートしていた
夕日の橙が街を染めていく時間だ
リジーは大きく伸びをした

「んんー! 今日も楽しかったわ、ありがとうチャールズ」

「べ、別に… 当たり前じゃん! 男はレディを退屈にさせない為にいるんだからっ」

グレイはそっぽを向いて言う
顔が赤いのは夕日のせいではないだろう

リジーは微笑む

「ふふっ、何それ」

「で、その店行きたいの?」

「え? んー、気になるけどもう遅いし…」

リジーは時計を見て呟いた
その顔には“時間があるなら行ってみたい”と書いてある
グレイはリジーの手を引いた

「行くよ、リジー」

「…! うんっ!」


リジーは笑顔を浮かべチャールズに引かれて行った

「で、どっち?」

コケそうにもなった






そこは路地裏を通って入る、不思議なお店だった
二人は看板を見上げる

「玩具…“夜”?」

日本語に表記するとそんな感じの店名が書いてある

「字、間違えてるわね…」

「とりあえず入る? もう閉店しちゃうだろうし」

「そうね」

リジーとグレイは来店する
カランカランとドアに取り付けられたベルが店内に鳴り響く

すると店内から一つの影が現れる

「いらっしゃいませ」

どこか機械的な口調で話すオレンジ色の髪をした此処の店主と思われる人が出てきた

リジーはこの店に自分とチャールズ、そして奥から出てきた店主を見て申し訳なさそうに口を開く

「ごめんなさい、もう店仕舞いしたところかしら?」

すると店主はいいえ、と首を振る

「大丈夫ですよ、今開店したところです」

「えっ? 今?」

「はい、申し遅れました
僕は此処の店主のドロセル・カインズと申します」

「あ、私はエリザベス・ミットフォードです、でも珍しいですね こんな時間から営業開始だなんて…」

「そうでしょうか?」

「珍しいと思うわ? 玩具屋さんって朝から夕方位のところが多いから…」

「僕の店は夜に来るお客様が多いんです」

「へぇ〜」

とリジーは店内を見回そうとした時だった
今まで黙って会話に入ってこなかったグレイがいきなりリジーの腕を引っ張り出口へ向かった

「帰るよ、リジー!」

その顔は赤く染まっているように見える

「え、どうしたのチャールズ!?」

「いいからっ!」

グレイがドアに手を伸ばそうとした時

「お待ち下さい」

ドロセルがドアの前に立ちふさがった

「何っ!?」

「もう少し見ていって下さい」

「こんな店の商品を見るつもりはないっ!」

グレイが叫ぶとリジーが抗議の声を上げる

「ちょっと、チャールズ失礼よ」

「いや、だって…」

グレイが何か言おうとした時、ドロセルが何かを取り出した

「此方の商品は先日届いたばかりのもので…」

ジャラ…

どこから取り出したのか、三メートル程の鎖がドロセルの手から地面に垂れていた

「鎖…?」

リジーは目を丸くして見る

グレイは早々に口を開く

「初対面の相手に何進めてるのさっ!?
もうこの店がなんで“玩具夜”なのか分かったよ!」

「お気に召しませんか? では此方の…」

ドロセルはまた別の商品は取り出した

「縄です」

「言っちゃったよ! ハッキリ言っちゃったよ!!」

グレイは盛大に突っ込む

リジーは未だにキョトンとしている

「ねぇ、チャールズ さっきから何叫んでるの?」

「いいの! リジーは知らなくてっ!!
って言うかボク達にそんな趣味は――」

「お客様が何を仰いたいか僕にはわかります、跡が付くことですね?
焦らした甲斐がありました、此方は今日届いたばかりの―」

ジャラ…

「愛の輪です」

「手錠だよね!? どーみても!! 縄はそのまま言ったのになんで手錠はそんな言い回しになる訳!!?」

「此方の商品は手に跡が付きにくい商品となっております」

「そー言う問題じゃないんだよ!!」

グレイが叫ぶとドロセルは手錠をしまう

「お気に召しませんか? では此方の商品、在庫が残り99個となっております、愛の鞭です」

「ただの“鞭”で良いよねコレ!? 在庫99って全然売れてないよね!?」

「いいえ、先程仮面を付けたお客様が『ふははは!! この張り具合なかなかのドS!! よーし、これは残夏の土産だ!! 悦いぞ 悦いぞー!!』と言って一つご購に――」

「買ったんかーーい!!!」

はぁはぁ と息を肩でするグレイ

ドロセルはあくまでマイペースに事を進めていく

「此方の商品もお気に召しませんでしたか、ところでお客様、来店した時に聞き忘れていたのですが…」

「何?」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ