Treasure
□両手を目一杯広げながら(小説)
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両手を目一杯広げながら
アッシュ、と呼べば 直ぐに駆けつけてくれる。私が泣いていたら、直ぐに抱きしめてくれる。私が好きと言ったら、とても甘いキスをしてくれる。
そんな彼と。
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夜。
ユラユラと揺れる蝋燭の灯りに照らされたアッシュの普段余り見ないベスト姿に、ほぅ…とついため息を漏らす。逞しくて、カッコ良くて こんな彼と共にいられる事が夢みたいだ。
私のいるベッドに片膝をついて、私を優しく抱きしめてくれる。髪を撫でるそれは優しくて、愛されてるなあと キュンっと身体がほわほわと熱くなった気が、する。
ふにふにと触れるだけのキスをして、そこからどんどん深くなっていくそれがたまらなく好きで ちらり、と目の前を見れば 普段見る事のできない 余裕のなさそうな表情のアッシュがいて、これからそう言う事をするんだって事はわかってるけど とても恥ずかしくなった。蝋燭消して欲しいわ、アッシュ。
なんてね。
「段々慣れてきたようで」
「あらほんと?嬉しいわ!」
「嬉しいのですか?」
「ええ。だって私ばかり気持ち良くなっては嫌だもの」
「お嬢様…」
ジーンと聞こえてくるぐらいアッシュが涙目で服に皺をつけるぐらい心臓の辺りを握りしめてて、周りにお花が舞ってる。アッシュは意外と感動屋さんだから、こうなるアッシュは珍しくない。キリッとしたアッシュじゃなくて こう言う時たま可愛くなるところが、アッシュの魅力だと思う。
消火しましょう、なんて早足で蝋燭の方へ向かっていく広い背中を見ながら これからするであろう行為に期待した。