novels.(John×Alice)

□「LOVE BRACE」
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「LOVE BRACE」
    ※ジョン視点です。
 

「おはよう、ジョン」

誰かが私に声をかける・・・だがどうせくだらない用事だろうと思った。今はこれからの陛下のスケジュールを入念に確認する仕事の方が大事なのだから。

「―ジョンてばっ!」

今度はすぐ後ろで声がする・・・。

「―」

私は立ち止まり、ゆっくりと後ろを振り向いた。

「やっと気づいてくれた・・・」

「アリス・・・」

すぐ後ろに立っていたのは、王室のメイドのアリス―私の幼なじみだった。

「・・・どうしたんだ?こんな所で・・仕事の時間のはずだろう」

なるべく優しくそう言った。

「今日少しだけ・・・話がしたいなと思って―」

「・・・・」

ニッコリと微笑む彼女の顔をゴーグル越しにじっと見つめる。

「時間・・・とれないかな?あ、今日じゃなくてもいいの、明日でもいいし明後日だって―」

「そんな時間はない・・・」

私には自分の声がかなり冷たく聞こえた。スッと背を向けて、手に持った資料の内容を頭に入れようと集中する・・・。

「―そう、だよね・・・ごめんなさい」

パタパタパタパタ・・・

「―ア・・・」

私はサッと振り返った―呼び止めようとしたんだろうか・・・?その名を呼んで。「アリス」と―。

「・・・・」

しばらくの間その場所に立ち止まったままで、アリスの立ち去った方向を見つめていた。

「―ふう・・・」

言い方が冷たすぎただろうか?少しだけ後悔する・・・。彼女―アリスとは子供の頃よく遊んだ。スコットランドの片田舎で・・・家も近かったせいか、毎日のように夕暮れ時まで話をしていた―。それから何年か後、私は両親とともにこのイギリスに移り住んで王室で、陛下のお膝元で働かせていただくこととなった。

「・・・・」

イギリスに来る前、私はアリスに別れの言葉を告げなかった。また、会えるということを心のどこかで信じていたのかもしれない・・・。そしたら1ヵ月前にここでメイドとして働いている彼女に再会した―。

『ジョンッ!』

アリスは輝くような微笑みを浮かべた後に、その瞳に涙を浮かべて私に抱きついてきた。その時何も言わずにただ泣いている彼女を突き放すことなどできなかった・・・いや、できるわけがなかった。私も、嬉しかったのだから―。
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