novels.(grey×lizzy)
□Sweet Lady〜瞳に恋して〜
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なかなかボクと瞳を合わせないられないで、なにやら言いづらそうにしている。
「なに?どうしたの・・・」
クスッと笑ってそう尋ねた。
「あ・・・の、この間はハンカチありがとう。洗ったのでお返しします」
エリザベスは恥ずかしそうにそう言うと、白いハンカチをボクの前にそろそろと差しだした。
「え?これあげるって言ったのに」
「だって悪いから、そんな―こんないい布地のハンカチ・・・」
「ふーん、そう?」
そっけなくそう返し、彼女の手からハンカチを受け取る・・・同時に、まだ包帯の巻かれている右の人差し指を見た。
「大丈夫?指」
「だ、大丈夫です!グレイ伯爵がちゃんと応急処置を・・・あっ///」
「・・・?」
言葉が途切れたと思ったら、エリザベスは顔を真っ赤に染めている
「どうしたのさ?」
おもしろいなぁ、この子・・・表情がコロコロ変わって。
「あ、あの大丈夫ですよっ!本当に」
彼女は真っ赤な顔のまま、ボクにニッコリと微笑みかけた。
「―」
その満面の笑みがなんだかとても可愛く思えて仕方なかった。純粋な天使の微笑みってヤツかな?つられてボクも笑顔を返してしまう。
「リジー!!」
「あ・・・」
「ん・・・?」
心配そうな顔で、人込みを抜けてこっちに来る金髪の男がいる。よく見ると、エリザベスによく似ている。
「リジー、おいリジー!」
「お兄様っ」
「リジー、探したんだぞまったく―」
言いかけて、ボクの方をギロッと見る。そっか、兄か・・・どうりで似てると思った。でも―
「・・・・」
なんか相当ボクのこと敵視してるな、この兄は・・・。
「・・・うちの妹に何か御用ですか?」
近寄ってきて、更に睨まれた・・・。
なんか、兄の雰囲気はフィップスのヤツに似てるかも。
「お、お兄様!この人はヴィクトリア女王陛下の執事武官のグレイ伯爵よ!」
「え!あ、これは・・・失礼をいたしました。てっきり妹になにか言い寄っている輩かと思い、早とちりを―」
「お兄様っ!」
「別にいいよ」
二人の顔を交互に見て、クスクスと笑いながらそう言った。
「それで何か御用?」
「あ、そうだ。リジー、母さんが呼んでる」
「そう、今行くわ」
「一緒に行こう、人が多いから転ばないようにな」
「―仲がいいんだね、君たち」
なんか微笑ましいな、ついつい和んじゃうよ。
「いや、そうなんですよ。兄の俺から言うのもなんですけれど・・・リジーは本当に可愛くて天使で―」
「やめてよお兄様!恥ずかしい・・・」
ボクの方をチラチラと気にしつつ、真っ赤な顔で兄をキッと睨んでいる。
「じゃあ・・・グレイ伯爵、私これで失礼します。楽しんでいってくださいね!」
「あ・・・うん、そうさせてもらうよ」
「あ、リジー待て!人が多いから―」
「大丈夫!」
二人を見送ると、ボクは手に持った林檎を一口かじった。
「天使、かぁ―」
「剣の天才」エリザベス・ミッドフォードと、あの天使のような笑顔が重なる・・・どっちもあの子なんだよね。
「剣なんて、似合わないよ・・・」
ボクはフッと小さく笑い、一口かじった林檎をじっと見つめた。
真っ赤な林檎が、真っ赤な顔のエリザベスに見える。
「ダンスのお相手でもお願いしようかな」
チュッと林檎にキスすると、人込みからチラチラと見える巻き毛のブロンドヘアーを瞳でじっと追った。
「Sweet Lady〜瞳に恋して〜」end