Treasure

□偶にはこんな日も(むさ様より)
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晴れ渡ったある日の午後、利家の屋敷に元親が訪ねて来た。
少々驚いたが、元親が来てくれた事が嬉しかった。

まだ陽が高く天気が良いので、縁側に席を用意させる。
腰を降ろしながら

「珍しいよな〜。お前から訪ねて来るなんて。しかも突然」

笑いかければ、

「急に来て都合が悪かったか?」

立ったままどことなく目を泳がせる元親。

(あれ?)

「そんな事ないさ。すっげ、嬉しい」

座れよ、と促しながら言えば

「…そうか」

ホッと一つ息を吐き、腰を降ろした。
その場所は

(なんか……近くねえか?)

利家のすぐ隣り。
縁側で茶飲み話とくれば、互いの間には茶があるはず。普段の元親もそうする。
しかし今は利家の左に二人分の茶の支度、右隣に元親がいる。しかも互いの距離は二寸程。

「え〜と、ほら、茶」

「ああ」

茶托ごと受け取った手はそのままに、じっと利家を見つめてくる。

(な、何だ!?)

そのどこか切なげな表情に、思わずドキリとする。

「…元親?」

名を呼べば、僅かに瞼を伏せて何かを言い澱んでいる。
心なしか頬が朱い。

「どうかしたのか?」

問い掛けてみても返事はなく、視線も外されたまま。
普段と違い、しおらしげな雰囲気まで漂わせている元親。


(…何だっていうんだよぉ)

どこか間が保たずに、自分の茶に手を伸ばして口を付ける。

「………ただ」

利家の戸惑いを察したのか、元親がゆっくりと言葉を紡いでいく。

「お前の顔が見たかっただけで…」

その言葉に固まった。顔を元親に向け口を開けて固まってしまった。

「利家?」

完全に動きを止めた利家の顔を伺うように覗き込む。


(い、今なんつった?コイツ何て言った?何かすっげえ可愛い事言わなかったか?……言ったよな。聞き間違いじゃないよな!…………うっ、そんな目元染めて!)


「元親ー!」

思わず力一杯抱き付くが元親は何の抵抗もみせず、顔を覗き込めば朱みのさした顔で微笑みを返したのみ。

(…殴られない!真っ昼間から抱き締めたのに怒らない!………しかも睨んでこないし黙殺されない!!)

感激に浸っていると、腕の中で元親が身動いだので苦しいのかと思い力を緩める。

するりと首に腕を回し抱き付いてくるのを、しっかりと抱き止めると

元親からの接吻。

軽く触れさせ、すぐに離れていくのを追いかける。

「ふっ…、ん……」

更に深く口付けようとしたら、舌に軽く歯を立てられたので、諦めて離れる。

「…元親」

拗ねたように名を呼ぶと、ギュッとしがみついてきて

「今日、泊めろ…」

ぶっきらぼうに言い捨てる。

「大歓迎」

愛しい人の真っ赤に染まった耳元に返事を返す。


(やべえかも…俺、今晩きっとケダモノだな…)

心の内は内緒のまま、ね
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