MAJOR

□二人のかたち
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〜吾寿の場合〜


「寿ー」

「なに吾郎くん?」

「結婚しよーぜ」

「うん………え、」


二段ベッドの上でゴロゴロしている男の話を、顔を上げずに聞いていた寿也はその一言で顔を上げた。

…少し顔が赤くなってたかもしれない。
だが、頬を赤らめさせた張本人は二段ベッドの上でゴロゴロを続けているため気づくことはないだろう。


「…こほんっ。吾郎くん、日本では同性結婚は認められてないんだよ?」

「じゃあ認められてる国に行く。ついでにアメリカで野球する。」

「…後者が本命だったりしない…?」

まったく、とことん野球バカであきれるんだか、彼らしくてほほえましいんだか…。


「アメリカで野球するが本命なら、結婚はごめんだなぁ。」

「じゃあ日本で結婚しよーぜ。」

「振り出しに戻ったね…。だから、日本では同性結婚はできないよ。」

「俺らの愛は法律もぶっちぎれるだろ!!!!!!」

二段ベッドの上でゴロゴロゴロゴロしてる男が法律をぶっちぎれるとは思えないよ。


「だー!!!!!!とーにーかーくっ!!!!俺とずーっと一緒にいてくれよ寿!!!!!!」

「っ!」

ゴロゴロばかりしていたはずの男が、急に二段ベッドから飛び降り、僕に近づいた。

とても、真剣な表情で。


「寿…」

彼は、優しく僕を抱きしめた。

「吾郎くん…?」

心臓が、壊れそうなほど、ドキドキと鼓動する。

「ずっと…一緒だからな」

抱きしめていた力を少し緩め、顔を見合わせるように体を起こし、僕に微笑んだ。

「俺には寿しかいねーから。…代わりに、俺がぜってー寿を幸せにする!!!!約束だ。」

な?っと笑顔を向ける彼。


あの日…両親が僕を捨ててから、人を信じることをやめた。

だがこの男は…この男だけは信じたい…。

昔から、ただまっすぐ僕を求めてくれる彼を。


「…ん……しょうがないね、吾郎くんは」

返事をした僕の顔も、彼に負けないくらい、幸せに笑ってたに違いない。



「寿が奥さんなら、「僕と野球どっちが大事なの!?」とか聞かなそうだしな。」

「聞いても無駄だろうしね…。」

「まあもちろん寿が大事だぜっ」

「っ////」
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