MAJOR(長編)
□ヤンデレラ〜吾寿/吾大編〜
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「と・・・寿っ!?」
夕暮れ時。
俺茂野吾郎は、一日付き合ってくれた清水大河を家まで送ると足を運ぼうとした際、本来ここにはいない・・・海堂にいるはずの俺の幼馴染である佐藤寿也が、目の前に現れた。
「久しぶりだね、吾郎くん」
寿はにこりと俺に微笑んだ。
相変わらずきれいな顔で笑うな・・・。
・・・いやいや、そうじゃねーだろ!
「寿!なんでここにいんだよ!まさか海堂辞めてきたのか!?」
「吾郎くんじゃあるまいし、そんなわけないでしょ。」
むぅっと、寿は少し頬を膨らませる。
きれいな顔と思いきや、こんな幼い顔もするんだよなこいつ・・・。
「短めの休暇なんだよ。世間はもうじき夏休みだろ?世間が夏休みになったら、海堂は野球一色だからね。その前の里帰り日ってやつかな?」
「そーだったのか・・・いやマジ驚いた!」
アメリカに行く前に会いに行こうと思っていたが、まさか寿から会いに来てくれるとは・・・。
「・・・って、あれっ?えっと・・・清水くん・・・だよねっ?」
当然寿が声を大きく出したと思えば、俺の後ろにいる大河に目を向けた。
「あっ・・・佐藤・・・先輩。」
「久しぶり!リトルのとき以来かな?」
リトル?こいつら横浜リトルで一緒だったのか!
「一緒だったのは一年だけだったけどね。ホントに久しぶりだね!」
「は・・・はい。お久しぶりです。」
笑顔で話しかける寿とは対照的に、大河はなんだか歯切れの悪い返事しかしない。
久しぶりの先輩の突然の登場に驚いてるのだろうか。
「せっかくだし、3人でどこか行きたいなぁ。さすがに今日は遅いから、明日とかさ。」
「あ、や、明日はさ・・・」
明日は大河と出かけるって約束が・・・。
って、ストレートに断っていいのだろうか。
気まずくなりそうだな・・・。
「あ・・・明日はダメなのかな・・・?」
少ししゅんっとなって、上目使いで俺を見る。
うーん・・・困った・・・。
「・・・あ、明日は茂野先輩と会う約束してたんです・・・。」
今まで黙っていた大河が口を開いた。
え、言ってよかったのか!?
いや、やましいことなんてないしいいんだけど・・・!
「もしよければ・・・佐藤先輩も、きませんか・・・?」
「い・・・いいの?」
ぱぁっと明るくなった寿が大河を見る。
「俺も、久々に佐藤先輩と話したいし・・・。
茂野先輩のめんどうを一人で見るのもタルいしっ」
「んだと大河ぁ!」
はーやれやれとジェスチャーを入れながら俺を侮辱する大河。おこ!
「うれしいな!じゃあ明日仲間に入れてね。」
「あ、俺午前中テストなんで、午後からでお願いします。」
「テスト?じゃああまり遅くにならない方がいいね?」
「いや、俺勉強しないんで大丈夫ですよ」
「あはは、できる子なんだね清水くんは。」
久々の再開というのに、もう二人仲良く話をしている。
・・・俺、忘れられてる?
結局、3人で帰ることになり、大河も途中で一人で帰った。
寿も海堂から帰ってきて、その足で俺を探していたらしく、かなり疲れていたため、まっすぐ家へ帰って行った。
夜。
俺は自室のベッドに寝そべり、明日のことを考えていた。
明日は何をしよう。
寿と大河と、どんな思いで作りをしようか。
そんな楽しみを考えているうちに、俺は眠りについた。