落乱小説

□彦星と織姫
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七夕の夜、乱太郎は独り満天の夜空を見ていた。

「彦星と織姫逢えたのかな?...いいなー。」

一週間前に逢ったばかりなのに、もう逢いたくてたまらない。

「しぶ鬼、なにしてるのかなー...」

はぁ...と、彦星と織姫にちょっと嫉妬しつつ乱太郎は部屋へ戻った。


乱太郎としぶ鬼は六年になった。
六年になった今、お互いに簡単に逢うことはできない。
だから二人は月一度、月の終わりに逢う約束をした。
約束はしたが、忍務のため逢えない時もある。


今日は七夕。
しぶ鬼に逢って丁度一週間だ。
一週間しか経っていないのに、乱太郎はしぶ鬼への想いでいっぱいだった。

(せめて夢の中で逢えますように。)

乱太郎は心の中で願い、眠りについた。

───
「乱太郎...今なにしてる?」
独り呟いてみても、返事なんて無くて。
ただ、無限に広がる星空と、眩しいほどに輝く月がしぶ鬼の独り言を聞いていた。

今日は七夕。
乱太郎に逢ってから一週間。

「まだ七日しか経ってないのかよ...。」

毎度のことなのに、この淋しさに慣れない自分が悔しい。

「慣れるわけないよな...ははっ」

しぶ鬼は苦笑し、天の川を眺める。

「彦星と織姫は今頃逢ってんのかな?...僕も逢いたいよ、乱太郎に。」

(僕も早く乱太郎に逢えますように。)

彦星と織姫に願い、しぶ鬼は部屋へ戻り眠りについた。

───
今日は三十一日。
二人が月一度、逢うことが許される月末だ。

( ( 早く、逢いたい...!! ) )

しぶ鬼と乱太郎は約束の場所へ走っていた。
もう日は沈み、辺りは静寂に包まれている。

「はぁ、はぁ...乱太郎、まだかな?」

「しぶ鬼!!!」

「! 乱太郎!!」

二人はお互いを見つけると、
すぐさま駆け寄り、
きつく抱き締め合う。

「しぶ鬼...逢いたかったよぉ...!」

「泣くなよ乱太郎...僕も乱太郎に逢いたかった。」

「うぅっ...泣いちゃうよ。だって嬉しいんだもの...」

「僕も嬉しいよ。...乱太郎。乱太郎...乱太郎だ、本物の、乱太郎...」


しぶ鬼は乱太郎の存在を確かめるように、何度も乱太郎の名を呼んだ。


「ふふっ。本物だよぉ。」

「はぁー...逢いたかったよ、ほんと。」

しぶ鬼は更に強く乱太郎を抱き締める。

「ふふっ、痛いよしぶ鬼〜。」

「だって久しぶりの乱太郎なんだもん。たくさん抱き締めとかないと。」

「えー。じゃあ私もいっぱいしぶ鬼抱き締める!」

そう言うと、乱太郎もしぶ鬼を強く抱き締めた。

「乱太郎、可愛いっ!」

「しぶ鬼は、かっこいい!」

「あはは。ありがと乱太郎。」

「本当のことだもんっ。」

「...。」

しぶ鬼は乱太郎のあまりの可愛さに
不意にキスをした。

「...しぶ鬼っ」

「乱太郎...好きだよ。大好き。愛してる。」

ありったけの愛の言葉を紡ぎ、
もう一度キスする。

「ん...しぶ鬼、私もしぶ鬼愛してるよ。心から。」

そう言って、乱太郎もしぶ鬼にキスをした。


「...なんか私たち、彦星と織姫みたいだね。」

「あー、たしかに。」

「でも私たちの方がマシかな?」

「彦星と織姫は一年に一度だもんな。」

「んね。私たちは月一度だし。...逢えない月もあるけどね。」

「うん...。」

「...やっぱり私たちの方が辛いかも。」

「え?」

「だって、逢えない間は不安しかないもの。今元気かな?怪我してないかな?
...どうか生きていて...って。」

「...。」

「しぶ鬼...お願いだから、死なないで。無理は...しないで...。」

「あぁ。わかってるよ...。乱太郎こそ、不運なんだから、気を付けろよ?」

「あははっ。...うん、気を付けるね。」

乱太郎はしぶ鬼の胸に顔を埋めた。


「...あ、流れ星。」

「え、ほんと?!」

「うん。」

「お願いしなきゃ!えーと、」

( ( これからもずっと、二人で居られますように。 ) )

二人は声には出さなかったが、
同じことを願った。
ずっと二人で居たい。
ただそれだけのことなのに、
しぶ鬼と乱太郎にはそれが難しい。


幸せな時間はあっという間に過ぎ、
二人にまた別れの時がきた。


「...それじゃ、またな乱太郎。」

「うん...またね、しぶ鬼。」

最後にもう一度口付けを交わし、
二人は別れた。

乱太郎は去り行くしぶ鬼の背を眺め、
どうか死なないで、と心から祈った。

またひと月、逢えない時間がくる。




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