Let's rock!

□暑い日だった
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「あっつ……。」
そう意識せずに呟いて一人掛けのソファに倒れ込むように腰をおろす。
言ったところで何も変わりはしないし、むしろ暑さが強調されるのだが、言ってしまうのは人のさがである。
思わず手で顔をあおいでしまった。こうしても出す熱量が同じだから意味が無いという事を最後に思い出したのはほんの10分前の事だ。
どこかで小耳に挟んだだけだから、信憑性は薄いが確かにこの程度の風でどうこうなるとも思えない。
そんな正直どうでも良い事を考えつつ何をしようかと考える。いや、何もする気は起きないのだが、このままボーッと1日を過ごすのも、それはそれで嫌だ。かと言ってすることもない。暇を持て余していた。
額から汗が頬へ伝い落ちる。それを拭うこともなく、ただソファの上でボーッと何をするでもなく座っていた。

氷の槍で氷塊を作るのもありっちゃありだが、そんな事に武器を使うのも何だか可哀想な気もする。あの子達に心があるとするならきっと心良く「お使い下さい」と受け入れてくれるとは思うが、生憎私は武器の声は聞けないので、本当かどうかはこれからも謎のままだろう。意思が分からないのに、自分が楽したいがためだけに使うのはやはり気が引けるので、氷の槍を取りに行くのは止めた。

事務所には相変わらず半裸の若が、三人掛けのソファの左側を大きく占領してダラけている。コートすら羽織ってない。そろそろちゃんと服を着てくれないと目のやり場に困るのだが、こうも暑いと絶対拒否される。てか、暑くなくても拒否されそうだ。こちらはまだ慣れるのなの字も無いというのに。
左側にはネロが、やはり薄着でブルーローズの手入れをしていた。若みたいに半裸じゃないので有難い。ネロが薄着なのも珍しいと思いつつ、ネロの顔を窺うと、真剣な頬に汗が伝って、邪魔そうだった。集中しているうえにこの暑さでは汗が出て当然だろう。

キッチンでは、今日の料理当番、二代目が片付けをしている。
皿と皿が触れ合う音と、水の流れる涼しい音が耳に入って、幾分か暑さが紛れた。 偉大なり、音。
おっさんは依頼だろうか。バージルは昨日から悪魔退治の依頼で、今日の夜か明日の早朝に帰ってくる予定だ。初代は先ほど自室に向かっているのを偶然見かけた。暑いから部屋で一人で静かにいたいのかと考える。今にも溶けそうなのに、他の事に体力を使いたくない気持ちはもの凄く分かる。まぁ、初代がそう考えているのかは不明な訳なのだが……。
おっさんもおっさんで、どこにいるか分からないし、やる事も無くてヒマである。
あってもやる気しないか……。


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