Let's rock!

□恋人?いいえ親子です
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尊敬する、慕う、親しい仲である……。
どれも私の中でカッチリ嵌まる言葉じゃない。強いて言うなら、言い方は悪いが「懐く」の方がよっぽどそれに近い状態を表していた。どちらにせよ深い絆で結ばれているのは目に見えずとも確かで、尚且つ言い表せない絆であるから、私達の間では言葉にする必要はまず無い。
よく間違えられるが、私達は親子だ。愛しているが恋している訳じゃない。父親を「二代目」と呼ぶのはいささかおかしいとは思うが、ついてしまったクセを治すのは面倒だし、治す気にもなれないので「二代目」と「ゆき」で呼び合っている。 勿論、それが恋仲だと勘違いされる原因の一つだとは分かり切っている。
勘違いされるのはもう慣れた事だが、何回も違う人に同じ説明をするのは疲れた。何より、疑ってやまない人が居るのは労力の消費が激しくて困る。今は会計をしていた三十代後半くらいの女性と長いこと会話していたのにやっとケリを付けられた所だ。今時父親と娘が二人で買い物に来るのも珍しいと言えど、なかなか放してもらえなかった。
とにかく、二代目を待たせている。何故私だけ捕まえられたのかが謎ではあるが、理由あれどあまり二代目を待たせてはいけない。小走りで近付くとこちらを向き、ホントに微妙に微笑んだ。間違いなく初対面の人には分からない変化だ。ずっと一緒に居るからこそ分かるこの特権を、何だかんだ言って気に入っているのである。
内心言葉に表せないほどの幸福感を胸に秘め、二代目の横に並んで歩く。
見上げないと目視出来ない所にある顔は、整っていて美しい。お世辞でも何でもなくモデルをやった方が良いと思うが、本人はデビルハンターになる理由があったし、気に入っているから辞める気が無いのは知っている。
私のより遥かに身長の高い二代目に遅れた事を軽く謝ると、「気にするな」と言う言葉と共に手が降りて来て、私の頭を軽く撫でた。普段無口な二代目との会話は緊張するけど心が落ち着くというか、癒されるので密かな楽しみの一つとなっている。
撫でられて少しだけ崩れた髪型を荷物が邪魔ながらも直していると、二代目がさりげなく荷物を持ってくれた。
「あ、ありがと……。」
流れるような動きに若干の戸惑いを感じ、言葉がつまり気味に出た。何で戸惑ったのか自分にも分からなかったけど。
彼が垣間見せる優しさは、きっと彼なりのコミュニケーションの一つなんだと思う。私も結構成長したし、周りから色々言われて、二代目とどう接したら良いか分からずにギクシャクしてしまう面があるから……きっと気をつかってくれてるんだと思う。それがとても嬉しいけど感謝を言葉にはなかなか出来ないものだ。

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