魔界へ

□第3章 It's parallel world
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初代が来てから数日がたった。
多少形が違ってももともと住んでいた事務所、ということもあり、慣れるのに時間はかからなかった。

(やっぱり、『ダンテ』って事もあんだろうけど…。)
そう思いつつキッチンに行くと珍しく初代が立っていた。

(いや、おっさんじゃないから珍しくない…のか…?)
微妙に疑問符が浮かぶが、そのまま初代に近づく。
「初代ー。何やってんだー?」
「ん?あぁ、ネロか。いや、何か飲もうと思ってな。」
確かに初代の片手にはコップが握られ、その中にはおっさんが大好きな、いや、きっと『ダンテ』は全員好きな イチゴ・オレが半分ほど注がれている。

こいつらホント好きだな。甘いモン。特にイチゴ。
反応に困っていると初代が話題を切り替える。

「それにしても、チーズ入ってんのか…。今日の昼、何にする?」
「あっ、そうだった。」

危ねぇ、本来の目的忘れかけてた。それを考えに来てたんだった。
「実はな、何作るかまだ決めてねぇんだ。」
どうすっかな…。と頭をかく。そんな俺に初代はこう言った。
「じゃあ、昼飯は任せてくんねぇか?俺に案がある。」
そう言うと俺にキッチンから出てくれと頼んだ。
少し不安だが、断る理由もないのでおっさんの居る所へ行った。

「ん、坊や。どうしたんだ?」
「初代がメシ作るって。おっさんは作れないのにな。」
「そうか。」
そして再び雑誌を読み始めるおっさん。
そうかって…。まぁ、もういいや。

それより、腹減った…。
俺だってまだ育ち盛りだし、初代の部屋の掃除手伝って疲れたし…。
キッチンから微かに聞こえる音が子守唄となり、俺は静かに目を閉じた。
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