魔界へ

□第5章 The twins fell
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「雨…か。」
外は土砂降りで傘をささずに歩くと一歩でびしょ濡れになってしまいそうだ。もっとも、試したくもないが。
キッチンでは二代目がフライパンを振るう音が聞こえる。
彼が来てから三日の内一日、そして週一で初代が料理をするため、週に四日で料理すれば良くなり負担が軽くなった。毎日料理しているといえばしているのだが、手伝い程度なので、まぁ週に四日だ。
とは言ってもその他の家事や経済的なやりくりもあって楽とは言い難いのだが…。
そのせいで、表向きの便利屋の仕事もこなさなければならず、朝出て行った初代が気にかかる。
帰ってくるのは昼ごろと言っていたからそろそろだろう。
半人半魔といえど風邪ぐらいはひくと思うから一応シャワーの準備はしてある。流石にびしょ濡れのまま一日過ごすのもどうかと思うしな。

「I'm home….」
初代が全身ビッショビショで帰って来た。
髪も服も吸水の許容範囲を優に越え、ボタボタと水を滴らせている。雫なんて可愛いもんじゃない。
そりゃそうだ。傘をさしても濡れるであろう天気の中、傘もささずに帰って来たとなると、どれほど速く走っても確実にこうなる。
初代にタオルを投げる。あれで足りるかは心もとないが、もう一つ準備してある。
疲れた顔でそれを受け取るとさっそく全身を拭き始めた。
「Welcome home.どうだった?初代。」
「あぁ、雨宿りしてる所を偶然発見したんだが…捕まえると暴れだして無理矢理押さえつけて依頼主に渡した。…おかげでこのザマだ。」
両手を横に広げてポーズをとってみせる。
そう初代はネコ探しをしていたのだ。
下手に力を入れるわけにもいかず、かなり苦戦したらしい。
「とりあえずシャワー浴びて来いよ。準備はしてるから。」
もう一つのタオルを投げつけると、使っていたタオルを首にかけ、軽々と受け取った。
まあ、軽気で投げし。
「Thank you,Nero. そうしようと思ったんだ。気ィきくな。」
そう言いながらシャワー室へ向かう。
まだ水が滴ったらどうしようかと思ったが、思ったよりタオルが吸水してくれたらしく、大丈夫でホッとした。床が水を吸うと後々大変なんだ。
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