Sweet dream

□Rainy Rainy
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雨だった。しかもザアザア降りで、傘をさして帰らなかったら風邪を引きそうな程の雨だった。
依頼場所がかなり深い森という事もあり、多少は雨も降り込むが、普通に街を歩くよりは断然マシだ。 そのお陰で悪魔退治の最中は一滴たりとも濡れていない。……雨では。
雨粒が木の葉を叩く音は聞こえてはいたがこれ程までに降っているとは思いもしなかった。

天気予報は、こんなに雨が降るって言っていただろうか。
そこまで集中して見てはいなかったが、雨が降るとは言っていた。どうせ小雨だろうから歩いて帰ろうと思ったらこの様とは、とんだしっぺ返しを喰らったものだ。
こうなったら濡れて帰るしかないかと思いつつ、返り血を浴びているから雨で歩く度に流れて通行人の目につくかも知れないという危険性を危惧してなかなか決まらない。

雨も、濡れて帰るのも嫌いではないのだが、流石に血まみれで平然と歩くのもそれはそれでどうかと思う。
いっその事、風邪覚悟で充分に血を雨で流してから帰るか、依頼主にお世話になるかを考えた方が賢明かとも思っていると、ふと、雨宿り という選択肢を思い出した。
この雨では止む事は無いだろうが、少しでも弱まるかも知れないし、そうじゃなくてもゆっくり考える事も出来るだろう。
こんな山奥なら小屋の一つや二つ、あるはずだと探しながらブラブラと歩く。
迷いそうな森の中を少しばかり歩くと、小さな山小屋が見えた。
一応ノックをしてそっと中をうかがう。誰も居ない。試しに声を掛けてはみたが返事は全く無い。
今は使われてないのか、それともたまたま持ち主が居ないだけなのかは知らないが、無断で小屋に入らせてもらった。
コートを脱ぐ。少し雨で濡れているコートからは血の臭いがしたが、もう結構慣れてしまったものだ。慣れとは怖い。こんな吐き気のする様な物でさえ慣れてしまうのだから。
束ねていた髪をほどいて、床に座り込むと急に寒さを覚えた。
どうやら先程まで動いていたから気付かなかったようだが、かなり雨で体が冷やされてしまっている。動けば温まるだろうが、動くスペースも無いし、体力だって消費する。あまり賢い選択とは思えない。


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