Sweet dream
□Milky Way
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ーー七夕っていうのはね、織姫と彦星が、一年に一度だけ会える日なんだよ。ーー
どれほど昔に遡るか分からないが、昔、母にそう言い聞かされた思い出だけはしっかりと頭の中に残っている。
ーー雨が降って、星が隠れちゃったら、あの天の川も見えなくなっちゃうでしょ?ーー
私は何と答えたんだっけ。
多分、首を縦に振ったとは思うんだけれど、はっきりとは思い出せない。
近くの河原まで行って、わざわざ天の川を見に行ったんだ。
母が隣で七夕の話をしてくれるのを、興味津々に聞きながら星空を眺めてた。
確か、天気は雲ひとつ無い晴天で、星がよく見えた。
ーー雨が降っちゃうと、織姫と彦星は会えなくなるのよ。ーー
何で何でと母に質問攻めをした記憶がある。母は私の頭を撫でながら、全部丁寧に答えてくれたような気がする。
まだ何も知らなかった私の好奇心をその身に受け止めて、私が納得するまで受け答えてくれた。
微笑んでいただろう。きっと母は優しく、柔らかく。
もう、忘れてしまって思い出せない所もあるけど、今でも鮮明に思い出せる事がある。
この目の裏に焼き付いて離れないように、はっきりと。
この耳元で囁かれるように、くっきりと。
あの日の夜空に感動して、ため息のように感嘆をもらす私は、突然母に言ったんだ。
「雨が降っても、織姫様と彦星様が会えると良いのにね。」
母は天の川を指差して、私にこう言った。
「あの天の川は遠い遠い、お空にあるから、もしかしたら雲の上で一緒に居られるのかも知れないね。」
母は何を思っていたんだろうか。
何を思って、こう言ったんだろうか。
まだ、私には 分からないのかな。
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Milky Way
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