Sweet dream

□I'll tell you,baby.
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珍しく留守番一人しか居ない事務所に、俺は居た。机に足を乗せて体重を上手く椅子にかける体勢でいつも通り、スタイルの良い女性が載った雑誌をめくっていた。
他の奴らはほとんど依頼。そうでなくても出掛ける必要がある事ばかりで、正直話し相手もおらず暇を持て余している。この雑誌も今日だけで読むのは三回目だ。暇だからという理由だけで事務所を空にする訳にもいかず、欠伸をしながら誰かの帰りを待つ。

だが、そうそう帰って来ない。気分転換にとテレビをつけた。
画面では女性と男性のキャスターが並んで立ち、ニュースを読み上げている。それといった大きなニュースも無く、これぞ平和といった感じだ。俺にとっては暇だから何かの記念や気を引くニュースがあると良いのに、と思ってしまう。

『そういえば、今日は8月2日ですね。特に日本ではこんな事がインターネット上で調べられているようですよ。』
女性キャスターがそう言うと画面に、日本で調べられているワードがズラリと不規則に並んだ。その中の物を男性と女性のキャスターが簡単に紹介していくが、一つ気になったものがあった。

男性が女性に告白する日。

詳しくは分かってない、誰が言い出したのかすら不詳だが、ネット上で囁かれている話題らしく、よくあちらこちらで見かけるそうだ。マイナーではあるがロマンチックな内容の為、これにあやかる人も少なくないとの事だ。
『日本で囁かれている話題ですが、この国で実践しても面白いのではないでしょうか。 好みの女性に思いを寄せている男性の皆さん、是非その思いを伝えてみてください。』
キャスターが読み上げ終わるか終わらないかギリギリの所で髭はテレビを消すとニヤリと口角を上げた。

「Hum……面白そうだな……。」
その顔は、悪戯を思いついた少年の様に無邪気で、しかし大人の色香を含んでいるどっち付かずな妖しい笑みだった。

狙いは依頼で出掛けているあの人。
どんな手でイタズラを仕掛けるか楽しんで考えながら、髭はその人の帰りを待った。

「ちょうど、暇が潰せそうだな……。」


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