それぞれの物語

□この想いを…
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あなたは今日、この城から居なくなってしまわれるのですね…。
みんな寂しがるでしょう。正直、僕も寂しいです。


チャゴス王子は、今は嫌な人だけど…
きっと将来良き旦那様になってくれますよ。
姫の事を、必ず大事にしてくれると…僕は信じています。






覚えていますか?昔一緒に城を抜け出して、南の泉へ遊びに行ったこと。

陛下にはこっ酷く怒られたけど、すごく楽しかったんですよ?




あの時はまだ何も分かっていなくて、
「姫」っていう重い物がのしかかっていることに気づけなくて
気づいた時には、もう遅かった。







…あなたには、本当にたくさんのものを貰いましたね。
楽しかった思い出、僕のために弾いてくれたピアノの旋律、「近衛隊長」という地位。



そして、大きな愛。



貰ってばかりで、何も返すことが出来ない自分が情けない。


ラプソーンを倒した、世界を救った英雄?


ヤンガスやゼシカ、ククールが居なかったら、きっとドルマゲスにさえたどり着けなかった。
いくら大魔王を倒せたって、あなたを守れないと意味なんて無いんです。



ククールではないけど…

『あなたを一生守る』

そう誓って兵士になったのに…

あなたは馬の姿に変えられて、僕1人だけ無事だった。
結局あなたを守れたことなんて、一度もなかったんだ。






『お前にはサザンビーク国の王家の血が流れてるんだろ?
姫を奪いたいなら奪いに行け。お前にはその権利がある。』

『兄貴はトロデのおっさんにも負けねえくらい、馬姫様を大事に思ってるじゃねえでかすか!
アッシには王家のゴタゴタ何て分からねえでがすが、
何が一番兄貴と馬姫様に幸せになるかぐらいは分かるでげす。
もしもの時はこの弟分ヤンガス!精一杯兄貴の手助けをするでがすよ!』

『姫様を奪いに行っても、行かなくても。
どっちを選んでも、きっとエイトは後悔すると思うよ。
あなたってそういう人だもの。
でも、今までずっと自分の気持ちを抑えてきたんでしょ?
ちょっとくらいワガママ言ったって、誰も文句言わないはずよ?』


ククールやヤンガス、ゼシカはそう言ってくれたけど……

僕には、姫と結ばれる資格なんてないよ。
いくら王家の血を引いていても、僕は弱い人間だから。



あなたを見ていると、時々いつもと違う自分が現れるんだ。


『姫を僕だけの"もの"にしたい』と…


そう思っているもう一人の僕が、甘く誘って理性を蝕んでいく。



大切な人を…あなたを守れなかったと言うのに、自分の"もの"にしたいだなんて

なんて僕は愚かなんだろう。




僕には、これからのあなたの幸せをトロデーン城から祈っていること
ただ、それだけしか出来ないというのに。




幼なかったあの頃みたいに、笑い合える日はもう来ないんだ。




でも、もし叶うなら…











もう一度、あなたの無邪気な笑顔が見たい。




(終)
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