花束を君に

□No.4
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椅子と机が移動している。
ギギギ、ギギギ。
階下の人にとっては申し訳ない音が響く。
勿論机を持ち上げて運ばないちゃらんぽらんな男子がやっている。
ちなみに海道くんはちゃんとしている。
ああなるほど。
彼は無自覚のタラシか。
勝手に納得しているが、本人にとっちゃ迷惑の他ない(だろう)。
というかアミ以外の女子からの視線が真夏の紫外線かってほどに強い。
夏じゃない、まだ風薫る季節だ。

移動完了。
今日はこれで終了だ。
やっと家に帰れる。
心躍らせながら、私は鞄に荷物を詰めた。
「サキ」
「海道くん」
「一緒に残ってくれないか」
何故か紙袋などの大荷物の彼が衝撃発言。
折角帰れると思ったのに。
この気持ちを返せと声を大にして言いたい。
「……うん」
誘いは断れない方なので、ついつい了承してしまう私が嫌い。
だけど、笑えていたかな。
嫌な顔なんて、していないよね。
何事も笑顔が一番と、お母さんが言っていたから。
だから気にしちゃって。
静かに廊下を歩く。
そっと、そっと。
近づいてくる職員室。
昔から、この部屋の近くを通るのは苦手だった。
だって現に、バカをやらかした不良生徒に男教師が頭ごなしに叱っているから。
五月蝿いったらありゃしない。

職員室を通りすぎる。
たどり着いた場所は印刷室。
たくさんの紙が積まれている。
するとどうしたのか、紙袋を徐に開けたのだ。

「高級紙……」
「学校に寄付する分だ」


やっぱり理解に苦しむな、お金持ちって。
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