花束を君に

□No.9
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「退場します」

ついに、私のクラスが挙げられる。
やっと教室に戻れる。
そう安堵する。
立ち上がり、歩き始めた。
体育館から出たときに、ふっとある思いが横切る。
今日、バンに誘われるよね。
そうとりとめのない予感をして、クスッと笑ってしまう。



「終わった……」

結局バンには誘われずじまい。
やっぱり夏休みはみんな、真面目に勉強するのかな。
窓から見えるのは、夏空と飛行機雲。
今年はいつものように遊べる時間も少ないのかな。
教室から出る足が、ちょっと止まった。

みんなが変わっていく。
私は一人、置いていかれたまま。

「寂しい」

言葉に出してみる。
だけど人に聞こえない声のせいで、誰も気に留めてくれない。
いつもより確実に、教室から出るのは遅い日だった。
教室から出たのは結局、一番最後。
南京錠を閉めて、階段を下る。
1階に着く。
そこには、海道くんがいた。


「この後、暇か?」
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