花束を君に

□No.1
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「あ、アミ……?」
少しばかりではなく、かなり上擦った声になる。
「何、サキ?」
アミが聞いてくる。
「この人、ジンって言うの?」
「……ああ、サキは2年生の時に転入したから分からないわね」
当たり前の答えを返されてしまう。
「ああ、ジンは2050年と2051年のアルテミスに出場していて……あれ、サキってLBXやっていたっけ?」
「え、1年前始めた」
「じゃあ知らないな」
「バン、一から説明してほしかったな」
苦笑い、紡ぐ言葉。
本当のことなんだ、仕方がない。
LBXを実際に使い始めた日。
それはミゼル事変が終結し、災厄が終わった日――1年前。
あの日まで、LBXで遊びたくても、現実がそれを止め続ける日々だった。
最初のLBXはサラマンダー。
しょっぱなからこれかよと思いながらも、頑張ってコアカスタマイズとか色々してなんとかなった。
今使っているLBXは違う。
フレームはブロウラーフレームだが。
まあ、身の上話は一旦置いて、物語を進めなくては。
「もうすでに知っている人もいるみたい、ね……ほら、紹介して」
先生は、若干おどおどとした口調になる。
そりゃそうだ、転入早々戦闘機で学校に登校するトンデモな変人なのだから。
「海道ジンです、よろしくお願いします」
墨のような黒髪、雪のような白いメッシュ。
血のような赤い目……間違えても白雪姫ではない。 (その前に)彼は男だし。
私はこの変人少年の事を――恋愛以外の意味でドストライクに思えた。


「まさか、またバンくんと一緒の学校になるなんて思っていなかったな」
「本当だよ、俺もビックリしたし」
「それはこっちも言えるわ」
「またお前は戦闘機で来たのかと思ったからなー」
「みんな知り合いなんだね」
カズ以外のメンバーの教室前の廊下で、私達は雑談をする。
勿論、海道くんの話で盛り上がる。
今までなにやってたんだ、とか。
「えっと……サキ」
「うん」
ここからが本題である。
「LBXは、何を使っているんだ」
「うーん……ユピテル」
実は嘘。
私の相棒に名前は無い。
私のネーミングセンスに自信がないから。
「そうか、僕のはトリトーン。ナイトフレームだ」
と言いきる直前に、
「今日みんなでキタジマ模型店に行かないか?」
「もちろんよ」
「おっ、いいな」
と別の話をバンが始めていた。
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