花束を君に

□No.2
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「ごめん、待った?」
バンたちが待っている、トキオシア前の公園。
手を振って、ここにいるの合図を出す。
間に合ったかな、左腕に巻いた時計を見る。
……うん、ギリギリセーフ。
ポニーテールを揺らし、彼等のもとに駆けつける。
「全然待ってないさ、サキ」
「ジンがまだなの」
ジン……ああ、転入生くんかと一瞬で思い出す。
一般人からすれば随分と変人な彼だ、きっと今回も存分にやらかしてくれるだろうね。
えっと、目を見開く。


1年前のあの事件の日も、バンはこの公園を通ってトキオシアに行っていたのかな。
私は用事があって、バンたちと一緒にいなかったのだけど。
とりあえず今の私があの事変が終わったすぐの彼らに言えることって、『みんなが無事で良かった』なのかな。
そう簡単に、答えなんて弾き出せはしない。
だから、これが正答なんかちっとも考えていないのだ。


「でさ……」
「嘘でしょサキ!」
「冗談だろ!?」
「うん」
自然と笑顔が浮かぶ会話を、彼を待っている間にする。
公園のベンチに腰掛け、バンとカズはLBXのメンテナンスをしながら、アミはたまにCCMの時計を確認しながら、私は公園の入り口をチラチラとみながら暇を潰していた。
小さな綿雲がふわふわと舞いながら去っていく、青空から。
画用紙いっぱいにこぼれて染み込んだ薄青の色水が、空を見上げた私たちのいっぱいに映る。
見渡すと、Dキューブを広げてLBXを楽しむ純粋な子供たちがいる。
これは、私がLBXを始める頃には見られなかった。
楽しそうだな。
そう考えると、口角が自然と上がる。
多分、私以上にLBXを愛しているバンたちはこの光景を見て微笑ましく思ってるんじゃないかな。


来ないかな。
ピンクと黒のツートンカラーのCCMを開き、時刻を確認する。
ぶら下げているビーズのストラップがじゃらじゃらと鬱陶しい。
だけどわかった。
タイムリミットまで、残りが1分。
そんな状況だった。
「海道くん、遅いな」
ちょっとした独り言を呟きながら、ポニーテールを揺らす。
「すまないバンくん、遅くなった」
その独り言を漏らした次の瞬間、彼が視界にサッと入った。
――いや、いつからいたの?
この言葉で突っ込みたくなった。
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