花束を君に

□No.4
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「席替え!?」
「じゃあ、籤を引いてください」
学級委員の掛け声により、男子から籤を取っていく。
アミやバンの近くの席。
離れるのが寂しいな。
ぼんやりと滲んだ水彩画みたいな風景を見る。
とりあえず、眠いなと欠伸をして、海道くんの後ろにいた女子より何人か後方に並ぶ。
彼のすぐ後ろに並びたい気持ちも分からなくはない。
だって……誉めているか貶しているか分からんとか言われそうだが、変人なイケメンだし。
敢えて、いや絶対に残念とは言えない。
残念な箇所が戦闘機しかないから。
本人には失礼だけど。

黒板にこの番号はここという席の図が描かれている。
私が引いた番号は10番。
廊下側の席だけど、やや後ろの方。
コンタクトレンズでなんとか生活している私にとってはちょっと苦痛かな。
「アミ、何番?」
「3番よ」
「うげー遠いって……」
バンに期待を向けるが、苦笑いを浮かべていた。
「ごめん、サキ」
そう紙を見せた。
24番。
よりにもよって神様はこんなに理不尽な事をしでかしてくれる。
「アミより遠いじゃん!」
ちょっとバン、これどういうこと!? と口から出そうになったけど、我慢我慢。


「バンくん……どういうことだ」
私の思いを代弁してくれる人が!
と思ったらまさかの海道くん。
世に言うジト目である。
彼が持っていた紙は、開きっぱなしだったのか、裏側が透けていた。
透けた数字は9番。
急いで黒板を確認する。
9番を探して。

「よろしく、海道くん」
私は10番を目の前に出した。
ガヤガヤした教室の空気は、とても夏ではないのに蒸し暑くて。
そして海道くんは呆然としないでほしい。
地味に傷つくから。
「そうか……よろしく」
多分彼は、この場の空気についていけていないだろう。
また、憶測でしかないのだけど。
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