花束を君に

□No.7
1ページ/2ページ




「終わったー!」
開放的な気分になった。
「ジンを探さなきゃな」
「うん」
教室の南京錠を閉め、カズと廊下を駆け出した。
教室を片っ端から探すが、一向に海道くんが見つからない。

「おい、そっちはどうだ?」
「だめ、やっぱりいない」

1階のあの印刷室にも、彼の姿は無く、ただシンとした静けさと紙のにおいが伝わる。
カズも私も諦めて、鞄をからい直しこの場を去った。
「行こうか」

私は校門を出た。
……そして驚く。
でっていう展開過ぎてなにも言えない。

「海道くん……と、誰ですか?」
目についたのは、青髪アホ毛少年と赤髪ポニーテール少女、そして黒髪アシメ少年だ。
前者の二人は下級生の雰囲気だったが、最後の少年は初めて会う同級生だろう。
「貴女は……」
アホ毛の子が口を開く。
「中井サキ……だよ、よろしくね」
私は軽い笑顔を浮かべる。
相手のアホ毛がピョコピョコと動く。
生き物か。
面白いな。
「大空ヒロです」
アホ毛のかわいい少年の名前。
「押忍! 花咲ランだよ!」
ポニーテール少女は空手をやっていそうだな。
私は武道をやっていないから、今度少しだけ教えてもらおう。
多分、キツいだろうけど。
「で、そこの大人しそうなのは灰原ユウヤ」
「よろしくね、サキくん」
花咲さんに呼ばれたアシメ少年は、腕を伸ばした。
握手だろう。
握られた手。
その最中に、その名前に疑問を感じた。
――どこかで聞いたことがあるな。


青く澄んだ空には、ひとつの綿雲が漂う。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ