花束を君に

□No.8
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「マジで迷子になっちゃったよ……」

別のものに気をとられていたら、もう起こってしまった。
ただでさえあんな広すぎる家だ、ちゃんと見てくれよ……。
ため息をついたら幸せが逃げると聞いたことがある。
けどこれはつくしかないような。
キョロキョロしていたとき、後ろから足音が聞こえてきた。
音のテンポからして駆け足だろう。
誰だろう。
そう思って振り向く。

「ごめん!」

「すまない、サキ」

黒髪に白メッシュが特徴的な彼だった。
こうやって見つけるのは、彼にとって普通なのかな。
だとしたら優しい人だろう。
これが普通の広さとか思っていたら確実に変人だよ、海道くんは。
てか、彼は普通に変人か。
「さて、行こうか」
笑顔で私の手を握る。
一瞬ドキッとしたけれど、後から冷静になって考えてみればあれは迷子になった私を優しくエスコートしてくれたんじゃないかと思う。

「ありがと。 探してくれたり、連れていってくれたりで」

「別にいいんだ」

君は微笑みを浮かべただけだった。
長ったらしい廊下を、二人で歩く。
足音がこつこつと二人分響く。
数分もたたないうちに、バンやアミが待っているところまで着いた。
まあ当然と言われたら当然だが、あんな手を握られた状態で人に見られるものだから冷やかされる。
私が第三者なら確実にさっきの状態になった男女二人組を冷やかしている。

「ごめん、遅くなっちゃった」

私はそれだけを言った。
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