DY小説

□君の背中が映すのは
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「ちょっと出かけてくる。」


最近のディアッカの口からはこんなセリフをよく耳にするようになった。


「ん? なんだ、また女か?」

「まあな。そんなもん。」


眉を下げて皮肉な笑顔でオレに笑いかける。
まるで面倒事を済ませに行くかのように。


「フン、貴様もよく飽きないな。」

「まあそう言うなって。
心配するなよ、俺にとっての一番はお前だからさっ。」


こんなことはいつもの調子。
満面の笑みで投げキッスとウインクを仕向けてくるので、
やめてくれと言わんばかりの表情でディアッカを睨んだ。


「何の冗談だ、気色悪い!
 早くいけ!」
 
「オーライ。朝までには帰るから。
 ちゃんとメシ食って、鍵はちゃんとかっておけよ?」

「言われなくてもわかっている!」


ディアッカはオレに背中を向けてひらひらと手を振ると、財布と家の鍵だけ持って外へ出てかけていった。

オレとディアッカは学生寮でルームシェアをしている。

ディアッカが夜遊びに出かけるようになったのはもう随分と前のこと。
大学に入学して間もないある日の夜、突然出かけると言い出した。
初めは理由など聞かなかったが、日が経つにつれ頻度が多くなっていったので何の気なしに尋ねてみたのだ。すると、“女の所に行く”などと返ってきた。
彼女でも出来たのかと尋ねると、そうではなく、毎晩違う女と会っているのだという。
呆れてものも言えなかったが、他人の異性関係などに口を出す柄でもないので放っておいた。

ただ、最近は頻度が多くなった気がするが。


「…アイツの脳みそはどうなっているんだ、一体…。」


オレは一人残された部屋でそっとぼやいた。

羨ましいとは思わないが、夜遊びを娯楽の一つと捉えることが出来る気楽な性格は実に天晴だ。
オレにとってはまるで常識の範囲外。流石に愉快ではないが、その間は一人の時間が出来るし、読書や学校の課題にゆっくり取り組むことが出来る。

一人で食事を摂り、シャワーを浴び、課題を済ませ、ディアッカが帰宅する前に就寝する。
この生活にも、もう慣れた。

そして、明け方近くになると低血圧で眠りが浅いオレはいつも、
ディアッカが外で纏ってきた知らない香りで目が覚める。
オレはその香りがどうも苦手で、頭まで布団を被って朝を迎えることが多かった。
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