DY小説

□You really want to…
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「イザークの手作りの料理が食べたいなあ。」



ディアッカがそう口にしたのはつい先週、3月中旬のこと。


誕生日に何を渡せば良いのかわからず、思い切って何が欲しいかを尋ねた所、この返事だ。



知っているとは思うが、
オレにはそんなものは作れない。

そう言ったら、



「じゃあさ、
 その日の晩ごはん、一緒に作ろう?」



と返ってきた。


やはり、それだけではこちらとしても納得がいかないが
他には本当に何もいらないのかと尋ねれば、いらない、と返ってくる。

後ろから優しく抱き締められてそんなことを言われてしまえば、もうオレは何も言えないのに。





こうして、ディアッカの誕生日には二人で食事を作ることになった。



3月29日。



今日という日を最初に迎えたのはベッドの中。
大切な日にも関わらず、オレ達はそんなことを考えられない程に、互いに夢中になって心と身体を交えていた。

そして火照った体を鎮めながら、ふと時計を見れば既に0時を過ぎていた。

そして事情の後“誕生日おめでとう”と言おうと、目を合わせたらディアッカの優しい笑顔があった。

そこまでは覚えているが、その後の記憶は無い。

多分、言葉に出来ないまま眠ってしまった。




朝、目が覚めると、ディアッカは隣に居なかったが、シーツを首まで被せてくれていた。
それになんだか空気も温かい。そう思って時計を見れば10時を差している。
いつもより朝寝坊だ。


少し重たい身体を起こし、簡単にルームウェアを着る。
キッチンへ向かうとテーブルの上には二人分の朝食が用意されていた。




「あ、イザーク、おはよう。今起こしに行こうと思ってたんだ。
 朝メシ、食うだろ?」


「ああ…。
 起こしてくれればよかったのに。」


「うん。けど、昨日は少し無理させちゃったからな。
 身体の方は大丈夫か?」


「あ…いや…。」



ディアッカの言葉に、自分の体温が上がるのがわかる。

確かに、昨日の夜は次の日が休みということもあり、いつもより激しかった。


しかし、無理をさせたとは言われても、
ディアッカはオレが嫌がることは絶対にしないし、ちゃんと気遣ってくれる。

ディアッカはいつだって、オレのことを大事に抱いてくれる。



「…別に、そんなのは、良い…。」


「…そっか。
さ、食べよ。」

「あ、ああ…。」




恥ずかしさを隠すために茶碗を抱えて朝食を口の中にかきこんだ。
そんなオレを見て、ディアッカは幸せそうに笑っていた。




朝食を終えて、顔を洗って私服に着替える。

レースカーテン越しに外を見ると今日は天気が良さそうだ。

ぽかぽかと温かい日差しが窓から差し込み、窓を開けると春の匂いがする。
今日は雲一つない晴れ日和で外の風が気持ち良い。



「…ディアッカ!」

「?何?」

「花見に行くぞ!」


「え、ええっ?!
 今から?」

「そうだ!」



せっかくこんなに良い天気なんだ。
午前中の予定は決まっていないし、たまには一緒に外を歩きたい。



「…オーケー!
 じゃあすぐにお弁当作るよ!」


ディアッカは冷蔵庫に入っているものを使ってサンドウィッチを作る。
オレはその姿を隣で眺めながら、出来上がるのを待っていた。


「まだか。」

「もう出来るよ。
 イザークの好きなエッグサンドもたくさん作ったから。」




やった!


などとはたとえ思っても言わないが、


目を合わせて無言で頷いた。
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