「ふあー…」

「お疲れ様ー。後半はだーいぶがんばったんじゃない?」

 宿題のほとんどをいっきにすすめた渋谷はつかれきってぐったりだ。
 おまけに夕食でカレーをたらふく食べてベッドにダイブ。

「まあねー…村田こわいし」

「そんなことないだろ? 手取り足取り懇切丁寧におしえたじゃない」

「うとうとするたびにあんな冷ややかに見られたら眠気も飛ぶよ」

 だって目を離すといつの間にか夢の中じゃないか。

「じゃ、カレーもたべたし。僕もう帰るからゆっくりやすみなよ」

「えっ泊まらないの?」

 荷物をまとめているとしぶやがはねおきた。

「もう暗いし、今日一人なんだろ? とーまーっーてーけーよー」

 後ろから首に巻きつかれ苦しい。

「うっぐ。渋谷、苦しい苦しい」

 ぺちぺちするとしぶしぶうでははなれる。
 かなり不満そうだ。

「お泊まりセットなんて持ってきてないしさ」

「んーそれはさ、取りに帰る?」

「……渋谷」

 それなんかおかしいよ?

「今日折角一緒にいたのに勉強ばっかだったしさ。なーいーだろー?」

 渋谷のおねだりには弱い。
 でも。

「だーめ」

 さとすようにいうと、拗ねるのが目に見える。

「今日はずっと一緒にいたい」

 ぽつりという渋谷は本当にかわいい。

「誰もいない家なんて寂しいじゃん」

「そこはほら、慣れっていうか」

「そんなにいやなのか?」

 あ、やばい。
 本気ですねはじめてる。

「渋谷? お誘いは嬉しいけどさ、僕たちまだ高校生なんだし健全なお付き合いも大事にしなきゃ」

 空気を軽くしようと出来るだけ明るく。

「何にもしない」

「へ?」

「今日は何にもしない。誓う」

 今日は、ね。

「もーどうしたのー? 渋谷らしくない」

 こんな風に粘るなんて。

「……朝、おはようって村田に言いたい」

「……でも…」

 朝を迎えるには夜があるわけで。
 夜は寝る時間で。

「渋谷疲れてるんだから休まないと」

 僕がいたら休めないかもしれない。

「僕も今日は疲れたからもう寝なきゃ」

「一緒に…」

「だめだよ」

 渋谷の言葉をあえて遮った。
 僕だって一緒にねたいし、おはようっていわれたい。

「僕がうたた寝しただけであれだったんだ」

 あんな夢に、もしまたひきずりこんだらとおもうとそんなことできない。

「だから嫌がってたのかよ。そんなのわかってる。それでも俺は…」

 ギュッと渋谷が僕に抱きつく。

「俺はお前があんな夢、一人で見てる方が嫌だ」

「渋谷…」

「だから今日は泊まるんだよ。はい、決定」

 コンビニに買いに行こうぜ、と笑う渋谷は僕には眩しすぎる。

「……ほんとに、後悔してもしらないよ?」





 その後近くのコンビニでザッと買い揃えて、渋谷のベッドに二人で横たわった。
 何だかもの凄く緊張する。

「村田、手」

「?」

「手くらいいいだろ?」

 きゅっと握られると体から力が抜けた。
 なんだか安心する。

「……確かにさ、楽しい夢じゃないとおもうよ」

「……」

 当たり前だ。

「けどアニシナさん曰わく、よっぽど相性よくないとそんなことおきないらしい」

「え……」

「だから俺はどんな夢でもかまわないよ」

 僕は幸せ者だな。
 手に力をこめると、しっかりこたえてくれた。

「そうそう、その後アニシナさんのもにたあにされちゃってさ」

「へぇ、何をしたんだい?」

「それがさー…」

 ふんだりけったりな閨話をききながら、僕は明日の朝を思った。
 ゆっくり近づく眠気が、今はこわくない。






おわり
・・――――――――――
友人Aに貰ったtop絵にあわせつつ、拍手SSの続きみたいにしてみました
後悔はしていないが反省はしてる\(^。^)/

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