輝くイシは夢を信じて
□前世を信じますか?
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……ダメだ。
死にたい。もう死にたい。
…………いや違う。今日の俺は何も悪くない。
そもそも俺は何も悪いことはしてない。
悪いのは全て『これ』だ。
『これ』の存在を知ったのは、小学四年生くらいの時だった。
何故か突然、脳内で文字の羅列が廻りだし、ほぼ強制的に俺にそれを読ませた、というべきか。
まるで国語の教科書のように無機質な文字は俺に一つの物語を読ませた。
フィアナ騎士団最強として恐れられた英雄、『ディルムッド・オディナ』の物語を。
当初俺は、なぜか自分の脳内にディルムッド・オディナの記憶があると思っていたが、今はそのディルムッド・オディナは自分の前世であり、記憶だと思っていたそれは『記録』であると理解している。
何故か。簡単なことだ。
無機質な文字列が表すのは物語だけではない。ディルムッド・オディナの容姿まで細かく書いてあったのだ。
書かれていた容姿と自分の容姿がうり二つだったら、もう『記録』は自分の前世の物だと思うしかないだろう。
それに第一、そうでなければディルムッド・オディナの『記録』が俺の脳内に存在する意味が分からない。
そう気付いたのが多分中学一年の時くらいだ。その頃には『記録』は全て読み尽くしてしまっていて、中学一年から現在……高校二年になるまでに、何周も『記録』を読まされた。読まされる度、俺は人間恐怖症と疑心暗鬼が酷くなり、現在に至ってなお俺を『友達』と呼んでくれるのは、小中高と一緒にあがった女子の一人しかいない。いや一人いるだけで奇跡だ。
今になって、俺の中に新たな『記憶』が入ってきた。聖杯戦争だとかサーヴァントだとか英霊だとか、一日でどれだけ多くの生活に必要ない言葉を学んだことか。しかもそれは、昔からあったディルムッド・オディナの人生より凄惨だ。最後には自害してるし。何なんだよ。
そういったわけで更に疑心暗鬼の深まった時に、友人が俺を驚かすのが悪い。俺が蛇嫌いと知っていながら蛇の玩具を急に目の前にぶら下げるからだ。普段の俺なら普通に驚いて溜息をついて終わりだろう。だが丁度自害したのを読んだタイミングでの蛇。そりゃ女子だろうと幼なじみだろうと突き飛ばすだろう……
……はいはい、解ってるよ俺が悪いよ。
まぁそんなことがあってそろそろその女子との友人関係も危うくなってきたため冒頭の感情に至るわけだが。
そういえば、あいつは俺に恋愛感情とかなさそうだな。『記録』によれば、ディルムッド・オディナは背も高かったし筋肉もあった。俺とは雲泥の差だ。しかも俺は自分で言うのもあれだが目が死んでる。きっとディルムッド・オディナの目はキラキラしていたんだろう……自分で考えて切なくなってきた。やめよう。
さて、そんな存在が……目が死んでいて背が低くてヒョロイことを除けばディルムッド・オディナと容姿がそっくりな存在が『俺』だ。