輝くイシは夢を信じて


□主を信じますか?
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 景色が眩んだ。
 ぐにゃぐにゃと曲がって、様々に色を変えて混ざった。
 真っ暗な空間に最後には辿り着いた。
 仰向けな俺の目の前に、何かの破片が浮かんでいた。
 俺の腕は勝手にそれを掴んだ。
 すると、一気に光が漏れ出した。
 その時、誰かの声が聞こえた。

『……ごめん。お前が、俺の代わりに行くことになって……』

 何の話だ……?

『この槍を、お前に預ける。必ず、役に立つはずだから』

 槍……?

『生き残れ……お前なら、未来を変えられる』

 また、景色は暗くなった。

   *

 声が聞こえる。
「誓いを此処に。我は常世全ての善となる者。我は常世全ての悪を敷く者。汝第三の言霊を纏う七天。抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ−−!」
「……!? どういうこと…? 何も召喚されないなんて……」
「な、何故…何故だ!?聖遺物は本物であるはず…」
「まさか……英霊が戦いを拒否したんじゃ……」
「諦めろというのか!? 聖杯戦争を! これではアーチボルト家の名に傷が……!」
「……仕方ないけど……あら? 待って、ケイネス。魔力を送りつづけて。何か来るわ!」
「な、何……?」
 パン、と視界が弾け、浮遊していた感覚がなくなり、急な重力に堪えきれない体はそのまま倒れていった。そこを、声の持ち主であろう赤い髪の女が受け止める。
「これが……ランサー……?」
 男の声を最後に、俺はまた気を失った。

   *

 目が覚めた俺は、金髪の男と赤い髪の女に俺のことを話した。ケイネスと名乗った金髪の男は、数回頷いた。
「恐らく……平行世界、ということだろうな」
「平行世界?」
「この世界とは決して交わらない世界があったとする。その世界にいるディルムッド・オディナは今回の聖杯戦争に参加し、悲惨な末路を辿った。故に、違う世界があるのならせめてその世界の自分にはこの戦争に参加しないで欲しいと強く願った。するとの願いと戦争の記憶がこの世界のディルムッド・オディナに届き、お前には記録が送られた。この世界のディルムッド・オディナはその記憶を見て戦争への参加を拒否。聖杯はディルムッド・オディナの代わりを探して……お前を見つけたのだろう」
「この子の話を聞く限りだと、この子は未来から召喚されたことになるけど……そんなこと有り得るの?」
「ないとは言えないぞソラウ。何せ聖杯だ。何をするか分からん」
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