輝くイシは夢を信じて


□出会いを信じますか?
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 俺がケイネスと契約して二日。俺は段々と槍の扱い方を理解していった。ディルムッド・オディナの記録があるというのはこの場合ありがたく、思ったより上達が早かったのだ、が……。
「っはぁ……キツ……」
 俺は重大過ぎる一つの問題を抱えていた……そう、学校以外は引きこもっていたため、体力がない。故に二本の槍を同時に使うことは出来ず、ゲイ・ジャルグだけ使っている状態だった。
「ランサー、ソラウ」
「……どうした?」
「明日にはイギリスを発つ。荷物をまとめておけ」
「分かったわ。ランサーは霊体化できるわよね?」
「あぁ、恐らく……」
 試しにやってみようと思った。記録があるから感覚なら掴める筈だ。
「……ん?」
「ランサー?」
「……出来ない……」
 俺は俺より5cm程身長の高いソラウを見上げた。俺は……。
「霊体化……出来ない……」
「何だと?」
 その後、何度挑戦しても結局霊体化は出来なかった。ケイネスが考え込む。
「空港員に暗示をかけるしかないな……それに制服では都合が悪い」
「服買いに行く?」
「そうだな……出掛けるとしよう。いくぞ、ランサー」
「お、おう……」
 俺は召喚されて初めて、ケイネスの家から外へ出た。
 ロンドンの街は賑やかで、やはり英国の雰囲気は東京とは違う。……そして覚悟はしていたが、注がれる女性の視線。だがまぁディルムッド・オディナよりはマシなはずだ……いや、サーヴァントとしてのパラメータは変わらないなら同じか……?
 適当に店に入り、空港にいてもおかしくない服を選んだ。召喚されたときの服装が制服だから戦うときはどっちにしろ制服なのだが。
「……うむ、こんなものだろう。これなら普通のイギリスの少年だ」
「……なら、良いんだけど……」
「似合っているわよ、ランサー」
 まぁ、悪い気はしなかった。家では大体ジーパンにトレーナーしか着ていなかったから、あまりお洒落な服には慣れなかったが。
「さて、早急に家に戻って荷物を整えるぞ。ランサー、お前は家を出るその時まで訓練をしておけ」
「……分かってる」

   *

 翌日、10時の便で俺達はイギリスを発った。生前飛行機に乗ったこともなければ空港に来たことさえなかったので、新鮮な気持ちであると同時に、俺が生きていた時代の空港を見るより先にこの時代の空港を見たことに少し複雑な思いを抱いたことは言うまでもない。
 どうやら日本に直行せずに一度北の国に寄るそうだ。その国は一年の殆どが冬で、一年中雪に覆われているような場所らしい。改めて日本の四季を素晴らしく思う日が来ようとは。
 そんな国で下りる客もあまりおらず、飛行機は一組の乗客を乗せて一時間後に再出発した。
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