輝くイシは夢を信じて


□和を信じますか?
1ページ/4ページ

 結局、その日の夜はベランダで過ごした。時差ぼけ、初日からゆうにそっくりなセイバーに会ったこと、更に変態魔術師のキャスターが現れたこともあり疲れていたためか、暫く座っているうちに寝てしまったのだが。
 日が昇る。立ち上がり、町を見渡してみた。
「……!」
 昨日俺とセイバーとキャスターが会った倉庫街から程近いところの地面が酷く刔れていた。多分、セイバー、そしてライダーとバーサーカー、アーチャー。いなくて良かった、と心の底から思ってしまった。これが聖杯戦争。二週間程で終わるとは言えども、戦争。
「……嘘だろ……?」
 読んではいたが、ここまでとは……。
 と、その時ベランダの扉が開いた。
「……ケイネス、あれ……」
「おはようが先ではないかね?」
「あ……」
 え、と思った。
 そういえばゆう以外に挨拶をするなんてなかったな。
「……おは、よう……」
「うむ。で、どうした?」
 俺は地面が酷いことになっているところを指差した。ケイネスはその意味が分かると眉間に皺を寄せた。
「また……派手に暴れた輩がいるようだな」
「……記録通りに進んでいるなら、ライダー、アーチャー、バーサーカー、セイバーのはずだ」
「なるほどな。あの跡は何のせいだね?」
「……ライダー、征服王イスカンダル。あの地面が刔れているのはライダーの宝具だろう」
「ふむ……」
 平常心を装って話していたが、実際にはこの光景を見て足がガタガタと震えていた。俺なんてあの場にいたら体が動かずにいるだろう。キャスターに立ち向かえたのはまだセイバーと俺で戦うなら勝算があったからだ。狂戦士のバーサーカーにセイバーが襲われたところで俺が何もできないのは明白な事実。そこにアーチャーまで混ざると考えると……。
 背筋に悪寒が走る。俺如きあっという間に殺されてしまう。
「……なぁ、ケイネス……」
「……!」
 ケイネスは返事をせずに俺を注視していた。まぁ、そうなるだろう。俺は今、顔を真っ青にして震えているのだから。
 仕方ないだろ、俺はサーヴァントであるより先に、ほんの先日前までただの鬱高校生だったんだぞ。体も小さいし軽い。筋肉だって全くない。それにそうだ、自分で言ったじゃないか。同じ流れになるとは限らない。記録はいつまでも使える訳ではないんだ。
「……おかしいだろ……? 昨日、できる限り勇敢にキャスターに立ち向かったのによ……戦場の跡地を見たら震えが止まらないんだ……もう死んでるのにな……」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ