輝くイシは夢を信じて


□戦いを信じますか?
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 なんだかんだ寿司屋に長居してしまった俺達は、店主に金を払って礼を述べた。
 店を出たときには、既に時計の短針はニを指していた。
「中々楽しかったぞ、ランサー!」
 大声で笑うライダーとはまるで逆、そのマスターはもう帰りたいと顔に書いてある。
「……今回は見逃そう、ウェイバー君。だが次は覚悟したまえ」
「……」
 苦々しい顔でいるウェイバーに同情。まぁ気持ちは分かるが。
 と、ここでライダーがそうだ、と手を叩いた。
「ランサー、御主バーサーカーの正体が分かったりしないか?」
「え……バーサーカー?」
 何故急にそんなことを聞くんだコイツは。昨日あそこにいなかったんだから知るわけがないだろう。記録にも、バーサーカーの正体を掴む鍵はない。
「いや……俺は知らない」
「むぅ、そうか。いやな、昨夜セイバーが既にランサーに正体が知られていたと疑問符を浮かべていたものでな」
「…どうしてそんな会話を」
「ふふ、余が先に名乗ってセイバーを挑発したのよ。セイバーは、どうせもう一人にばれてしまったから構わないと言ってな。それも自身から名乗った訳でもないと、不思議そうな顔をしておったぞ」
 楽しそうに話すライダー。俺は肩を竦め、溜息をついた。
「のうランサー、御主、余の名は分かるかの?」
 ケイネスを見れば、言ってやれ、と言われたので遠慮なく口から出した。
「アレクサンダー大王……征服王イスカンダル」
「ふむ、天晴! その通りよ! どうだ? 一つ、我が軍門に下ると言うのは!」
「断る」
 即答するとライダーは残念そうに口を尖らせた。どこの誰だ、コイツをマケドニアの偉大なる王と言ったのは。ただの悪ふざけだろ、絶対。
「まぁ、良い良い。夜に出逢うのを楽しみにしておるぞ、ランサー」
「……そうか」

   *

 夜。出歩こうかとケイネスが言った矢先、それは起こった。誘っている。誰かはわからないが、サーヴァントが近くにいた。
「ケイネス……」
「乗ってやれ、ランサー。何、サポートはしてやる。宝具の開帳は貴様次第だ」
「……わかった」
 俺はシャツの上に白いベスト、紺ベースのチェック柄ネクタイという、召喚された時の姿になった。紅い薔薇を手に、俺は窓から飛び降りた。
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