輝くイシは夢を信じて


□恋を信じますか?
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『ねぇ、姫乃、姫乃…どうして……どうして死んじゃったの!?』

 ゆうが泣き喚く。

 俺のせいだ。
 俺が姫乃を殺した。

『三年二組の皆さん、今日から皆さんの友達の、相澤姫乃さんです。仲良くしてあげてくださいね』
『相澤姫乃です! よろしくお願いします!』
『姫乃!?』
『! ゆうちゃん!?』
『わー! 久しぶり姫乃ー!』
『保育園ぶりだね!』
『ゆう、友達?』
『うん、あ、紹介するね姫乃! この子は一年の時から一緒の輝石信也!』

 小学三年生。
 まだディルムッド・オディナを知らない俺。
 友達がいた俺。
 相澤姫乃が好きだった俺。

 けれど、小学六年生。

『なぁ聞いた? 相澤さん、中学の先輩にコクられたんだって!』
『まじか! 可愛いもんなぁ!』

 記録を読んでいた俺。

 そして、中学二年生の夏。
 既に、人を簡単に信じなくなった俺。

 なのに。

『ひめ……っ』

 屋上で塞がれた唇。
 嗚呼……これでは前世と変わらない−−!

『信也君……好きだよ……』


【我が愛と引き替えに貴男は聖誓を負うのです】
【愛しき人よ、どうかこの忌まわしい婚姻を破棄させて、私を連れてお逃げください】

【地の果ての、そのまた彼方まで!】


『……姫乃は……彼氏いるだろ』

 繰り返したくない。

『あの人……私好きじゃない……』
『じゃぁ何で付きあってんの』
『最初は好きだったの』

 好き勝手な女達。

『でももう好きじゃない……あの人ね、暴力なの』


 −−その目に、うっすらと涙が浮かんでいるのが見えた瞬間。

 彼女を抱きしめたくなった。


 −−泣かないで、姫乃。
 −−俺が君を守って見せるから。


【許さぬぞディルムッド】

【この裏切り者め!】


 茶色の髪を編み込んで、大きな瞳を潤ませて……。

 そうだ、姫乃はグラニアなんだ。
 俺を破滅へ導く女。

 この女の要求を呑んだら、俺は……。


【フィンは】
【二回水を零した】
【そうして、フィオナ最強の騎士は死んだ】

 姫乃の為に死ねたら幸せか?
 そんな人生で俺は満足か?


 そんな訳がない。


『……姫乃』
『……何?』
『……姫乃の気持ちには応えられない』
『っ……! どうして!? ねぇ、どうして!?』
『姫乃とは……友達でいたい』
『ゆうのこと……好き?』
『そうじゃない……ただ俺は……恋とか分からないから』

 俺は何でも言ってやる。
 あんな最期を迎えないためなら、どんな嘘でもついてやる。
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