輝くイシは夢を信じて
□仮説を信じますか?
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「−−覚悟は良いな、外道」
「ッ……!」
キャスターが歯を食い縛る。まぁ、贄にする予定だった俺も手に入らず、セイバーには切っ先を向けられる。簡単には引かないだろう。記録だと、血を霧状にして逃げるはずだ。構える。こいつは放っておくと大変なことになる……俺の槍を、折らなければならなくなる。逃がさないように構えた。
「っ……飛べッ!」
「っ! づっ……!?」
「なっ!?」
何かが目に入る。目が開けない。どうやらセイバーも同じようだ。
「弾けよッ!」
パンッと音がする。キャスターの気配が急激に遠ざかっていくのを感じた。段々目を開けるようになるも、そこには赤い霧が広がるだけだった。
「っ……あの野郎、何しやがって……わっ!?」
「あ、す、すまない、ランサーか?」
急に腕に体重がかかったと思ったらセイバーが俺の左腕を掴んでいた。どうやらまだ目を開けられていないらしい。どうやら俺達の目には子供達の血が水鉄砲のように飛ばされたのか、セイバーは目から血を流しているように見えた。右手で頬を擦ると、俺も血が流れていたらしく掌は血まみれだった。俺が構えていたためか、霧だけでは足らないと判断したのだろう。
「セイバー、歩けるか?」
「いや、すまないが、目が……掴まっていて、いいか?」
「え、あ……まぁ、いいけど……」
槍を消す。俺はセイバーが転ばないように、ゆっくりと歩き出した。
「……情けないな、すまない、ランサー……」
……本当に……本当にこいつは……セイバーは、俺を裏切るのだろうか。こんな、見た目は俺と変わらないような騎士が?もし、もし……セイバーが裏切ったのが、ディルムッド・オディナの勘違いだとしたら……?だって、こいつ衛宮切嗣と話してないらしいし、何より……セイバーは、女の子じゃねぇか…………て、何を考えてんだ俺は。セイバーが裏切ったからあんなことになったんだろ。俺の気をセイバーに集中させて、そのうちにマスターは、ケイネスに判断を迫っていたんだ。
信じてはいけないと、俺の何かが強く訴えた。
*
帰って最初に、俺達は目を洗った。セイバーは治癒をしてもらっていたが、左腕の傷は治らなかった。
「どういうことなんだ?」
衛宮切嗣の冷たい視線が刺さる。身体が震える。三大騎士は基本的に最後まで生き残る。それが、こんなに弱ければ当然だろう。
「ランサーの正体は……何だ?」
「それは……その……」
「言えないほどの大英霊というわけでもないだろう?」
そりゃぁそうだ、一般人なんだからな。
「……切嗣、ランサーは恐らく……」
「答えて貰おうか、ランサー」
衛宮切嗣はやっぱりセイバーを無視。俺は二人の間の空気と衛宮切嗣の視線の冷たさに耐えられなかった。
「っ……」
「! ランサー!」
俺は、部屋から逃げ出した。