神韻縹渺

□神韻縹渺T
1ページ/37ページ



『っはー.....』

雲一つない快晴。
秋晴れの空を仰ぎ、一宮莉紅は大きく伸びをした。
比較的高峰に構えられたこの合宿所は、スポーツをするに適している。気温は高過ぎず、夏は過ごしやすい。尤も、冬は手が悴むほど寒いのだが。
あと一月もすればそんな時期になるのだろう、と莉紅は未だ白くはない息を吐いた。

晴貴「...莉紅、」
『ん?どしたのハル』
不意に口を開いた、黒髪の少年。珍しく自分から話し掛けてきたな、と莉紅は笑う。
晴貴「さっきコーチ達が話してたんだけど、来月ここに中学生を招待するんだって」
『.....ホントに?』
晴貴「ん、たぶん」
『まーた、意味分からんことを考えるよねえ』
くす、と口元だけで笑いながら、その双眸は訝しげに伏せられる。
晴貴「...青、学?だっけ。あそこも呼ぶらしい」
『って言うと、手塚か』
晴貴「...俺は知らないけど」
『全国制覇したトコの部長。割と名は知られてるよ』
晴貴「ふうん....」
『興味無いってね、』
ふっと視線を遠くに遣る晴貴に、予想通りな反応に笑みを浮かべる。
晴貴「...強い人以外に、興味なんてないよ」
『ま、来てからのお楽しみだね』
晴貴はくあ、と欠伸をひとつ。指先で目を擦る様子は言葉通りだ。
晴貴「ちょっとだけ、期待しとく」
『楽しませてくれるといいんだけど』
晴貴「...どうだかね」
珍しく口角を上げたチームメイトの姿に、莉紅はつられて微笑んだ。





.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ