ヴァンパイア騎士 -蒼の姫-
□新月の夜
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あれはいつだったっけ。
優姫と零が熱を出して寝込んでしまって、私が代わりに守護係の仕事をしていた夜。
夜間部の授業が行われている傍にある場所に立ち、そこから出歩きをしている子達がいないか見下ろしていた。
『........っ、』
するり、と後ろから首を撫でられた。
振り返ると夜間部の支葵が立っていて、私の目を見つめていた。
普段何を考えているかわからないけど、今日もそれは変わらない。
「何、してんの?」
『守護係の仕事』
「...ふーん」
支葵は私の答えに興味が無いらしく、もう一度私の首を撫でた。
少し冷たい手がくすぐったい。
『...盛らないでね、今は』
「...無理」
『授業中でしょ?真面目に受けなよ』
「一限ぐらい受けなくたって平気」
『またそう言って莉磨に頼るんじゃない』
「.....頼んないし」
『拗ねないの、可愛いからやめな』
むっとして目を逸らす支葵の頭を撫でる。
対して身長差が無いから、こうして撫でることはたまにある。
ふいにその瞳と視線が交差したかと思えば、ぐいっと顔を近づけてきた。
『ちょ、っと』
「うるさい」
左手で後頭部を押さえられ、右手で腰を引き寄せられ、熱い舌が首筋を舐めた。
痛みを予想して目を瞑る。後頭部にある手に力が込められて、同時に肌を突き破る牙の感覚がする。
[ジュルッ、ジュルル....]
『っ、く.....』
「ん........」
いつもより、吸われる量が多い気がする。
支葵の体を押し返そうとしてみるけど、その量の所為でうまく力が入らない。
段々足に力が入らなくなってガクガクと震えだす。
支葵はそれでも尚血を吸い続けて、腰にあった手で私の体を支える。
『し、きっ....も、無理、』
「....ごめん、もらい過ぎた」
牙が抜かれて、そこを舌でべろりと舐められる。思わずゾクリとしながらも、口の端についた血を手の甲で拭う支葵につい目がいってしまう。
『血液錠剤[タブレット]、飲んでないの?』
「あれ味しないし...不味い」
『そんなこと言ってもどうにもならないでしょ。私も毎回あんなに飲まれたらいつか乾涸びるわよ』
「その時はその時」
『どうせなら莉磨にもらいなよ』
「.......姫咲の方が、」
何かを続けようとしたみたいだけど、片手で顔を覆って黙る支葵。
どうしたの?って顔を覗き込めば顔を逸らされた。
『まぁ、いいけどさ。そろそろ授業に戻りなよ。枢に色々言われるよ?』
「ん、」
私の頭を撫でて、支葵はいつもの表情で私を見つめる。
首を傾げれば、何でもない、とそのまま教室の方へ戻って行った。
(血と引き換えに、)
(あなたの甘い毒が私を侵すの)
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