ヴァンパイア騎士 -蒼の姫-

視界いっぱいにあなただけ
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覚醒をして数週間が経った。
私は枢と理事長の計らいによって夜間部としての生活を送るようになった。
普通科として生活していた時から、藍堂や瑠佳とは仲が良かったから、周囲にも自然と溶け込むことができた。
それでもやはり、純血種と貴族吸血鬼との壁を感じて、敬われてしまう毎日ではあるけれど。
贅沢は言えないけど、接してくれるだけ有難いと思うしかなかった。


「慣れてきたみたいだね」
『...一条さん』
「大分溶け込んでるように見えるよ」
『まあ、そう...ですね』

にこやかな笑顔を見せる一条さんは、つくづく一翁の孫とは思えない。何がどうなればあの鉄仮面から向日葵みたいな笑顔を持つ孫が産まれるのかと常々思う。

寮へ着くと一条さんは枢の部屋へ行くと言って、そこで別れる。
ちなみに私の部屋は枢の部屋の隣の隣。支葵や瑠佳達の部屋とは離れているから、少し退屈。でもその部屋の位置もきっと、枢なりの配慮なのだと思う。

部屋に戻って、制服から着替える。
そしてベッドに寝転がると同時に、いつもの感覚が押し寄せてきた。

身体の奥から押し寄せてくる、沸き立つような衝動。それは渇きのようで、もどかしい感覚。
抑え込めるギリギリのそれはいつも、気を緩めた時に起こる。
覚醒してから日が浅いからなのか、単に血が足りていないのか理由は明確では無いけど、いつもこうして目を閉じて衝動が治まるのを待つ。


夜間部に入って気付いたこと。
支葵はいつも莉磨と一緒に居る。
2人とも猫みたいな人だから、お互い以外を必要としてないようにも見えて、それに気付いてからは、支葵の傍に行っていない。
まさか人間の少女のような感情が、覚醒した自分に在る事が信じられないという背徳感から顔を合わせる事さえ難しくなった。

それが続いて一週間以上が過ぎた今。
血は枢や一条さんに貰っているから足りてはいるけど、支葵のことが脳内を占める毎日だ。
元々は吸血鬼の牽制を目的にやっていたモデル活動も、昼間起きているのが辛いと理事長に言うと、辞めさせてくれた。
だけどそれに後悔もしている。
モデル活動を続けていれば、2人の傍に居ることができたけれど、辞めてしまえば近付けない。...まあ、仲睦まじい2人の間に入ることができるほどの度胸を持ち合わせている訳では無いけど。


そんな葛藤をしても、支葵は気付かない。














(だって貴方はいつだって、)
(私じゃない誰かを見てる)

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