ヴァンパイア騎士 -蒼の姫-

苦い珈琲に砂糖をひとつ
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明け方。
朝日が昇る前のこの時間は、外に出ていても平気だということを知って、以来こうして外に出ている。寒さや熱さをあまり気にしなくなった所為か、薄着でも何ら問題はない。
寮のテラスの柵に座り、ただボーッとしているだけでも、なぜだか気分は楽になる。


「姫咲、そんなところで何をしてるんだい?」
『...べつに、なにも』


背後に感じた枢の気配に目を細めながら、端的な返事を返す。
そんな私の様子に笑みを零した枢が一歩、こちらに足を進めた。


「そう。なんだか随分、寂しそうな背中をしているね」
『聞き捨てならないこと言わないで。寂しいことなんて一つもないわ』
「...それならいいんだけど」


隣に来た枢は、私の視線を追い、目を細めた。


「そういえば...君の婚約者が、君に会いたいと言っているそうだよ」
『婚約者?........居たわね、そんなのも』


十年振りに聴くその存在が、記憶の隅に居る。
名前は覚えているけれど、断片的な記憶の所為で容姿はあまり覚えていない。十年も経てば、幾ら吸血鬼と言えども何かしら姿を変えるだろうから、予測がつかない。


「菖藤の方から聞いたんだ。...そのうち、会いに来るかもしれないね」
『正直、覚えていないわ』
「覚えてあげて。君のことをあんなに好いているんだから」
『一方的な感情に愛なんてないもの。無意味でしかないわ』
「またそうやって......ああ、そろそろ日が昇るね」
『戻りましょうか』


枢に手を引かれて、テラスを離れる。

見える視界はうっすらと明るくなって、今の私には眩しくて仕方がなかった。












(暖かく目映い陽光は、)
(今はただの邪魔な光)
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